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【じつは中身が日本車だった欧米車5選】「シグネット」「アルナ」「Xクラス」のベースは? 欧州メーカーが日本車を選んだ理由とは

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TEXT: 塩見 誠(SHIOMI Makoto)  PHOTO: Mercedes-Benz/Stellantis/Aston Martin/General Motors/AMW編集部

アルファ ロメオ アルナ:日伊合作の大衆車

1980年代前半、イタリアのアルファ ロメオと日産は、合弁会社を設立してイタリア南部に工場をつくり、共同開発した小型車を生産した。共同開発といっても、プラットフォームは日産製。当時のアルファ ロメオは経営破綻寸前、といっていい状態で、ロクに新車開発をおこなえる状態ではなかったのだ。この合弁会社は、そんな窮地に陥ったアルファ ロメオの状態を表している、といっていい。

そんな窮地へと陥る要因のひとつとなったのが、やはりイタリア南部、ナポリ近郊ポミリャーノ・ダルコの工場で生産されていた、「アルファ スッド」の大失敗だった。スッドというのはイタリア語で南を意味する単語なのだが、このジウジアーロデザインを採用したスッドというクルマは、技術的にも優れた点がたくさんあったことから、販売は好調だった。

しかし、その品質ははっきり言って劣悪だった。とにかく、壊れるのだ。ボディは錆びるし電気系トラブルはあたり前。クーラーを装備すると確実にオーバーヒートしてしまう。それもあってアルファ ロメオというのは壊れる、というイメージが消費者の間に広がってしまった。ではなぜそんなに品質が悪かったのか。ひとつ上げられるのは、生産技術の低さや労働能力の低さにある。昔イタリアに行ったとき、いわれたことがある。南部の人間は仕事なんかしない。おれたち北部の人間が食わせてやってるんだ、と。それが本当かどうかはわからないが、しかし実際にスッドの品質は、ひどいものだった。

なのに、アルファ ロメオと日産の合弁会社は、イタリア南部に工場をつくった。おそらく、日産の生産技術を移管したかった、という狙いもあったのだろう。しかしN12系「パルサー」のプラットフォームを利用し、アルファ ロメオ伝統の水平対向エンジンを載せたこの「アルナ」は、デザインは日本車っぽく、故障の頻度はイタリア車並みという、悪いとこ取りのクルマとなってしまった。しかしもしも、この合弁事業をもう少し継続できていたら、クオリティの高いクルマがつくれたのかもしれない。実際アルナの開発時には、走りのブラッシュアップをするために徹底したテストがおこなわれ、フロントサスペンションなどはほぼ新設計といっていいものとなっている。

とはいえ、当時のアルファ ロメオや日産には、時間をかけて熟成させるだけの体力はなく、アルナの生産は1987年に終了し、合弁会社も早期に解散している。ちなみに、ベースとなったN12系パルサーにあった、パルサー・ミラノX1というグレードは、アルファ ロメオの本拠地であるミラノの名を使ったものとなっている。

シボレー クルーズ:見た目はワゴンRだが立派なアメリカ車

1981年、スズキとゼネラルモータース(GM)は、資本も含んだ戦略的な提携を結んでいた。これをGM側からみると、不得意分野といっていい小型車の開発や、アジア・オセアニア地域での販売面を期待してのもの、といえるものだった。

2001年、GMはスズキ車をベースとしたコンパクトカーを日本市場で発売した。それがシボレー「クルーズ」だ。スポーティ&タフネスをコンセプトとしてつくられたこのクルマの元となっているのは、初代の「スイフト」である。

スイフトはもともと、「ワゴンRプラス」のプラットフォームに「kei」の外板をセットすることでつくられた、いま風にいえばクロスオーバーSUV的なモデルだった。とはいってもその走りは鋭く、HT81S型スイフトスポーツは、ニュルブルクリンク24時間レースでクラス優勝したこともある。

そんなスイフトをベースにGMは、全長と全幅をわずかに拡大し、ゴールドのボウタイエンブレムをセット。ヘッドライトやテールランプも独自のものとし、ホイール径も拡大することで、スイフトよりもはっきりとしたタフさを演出している。

しかし販売台数は、期待したほどのものではなかったようだ。2008年の生産終了までに登録されたのは4万7000台強であり、2008年9月からはセダンへと大きく姿を変えた2代目がデビューしている。

アストンマーティン シグネット:基本性能の高さを誇るゴージャスなコンパクト

2008年10月、トヨタから革新的なAセグメントカーが発売された。大人3人と子供ひとり、または大人3人と荷物をという、3+1シーターを最大限コンパクトにまとめたクルマ、「iQ」がそれだ。

コンパクトなボディを実現するための構造は、独特なものだ。たとえばステアリングギアボックスは、一般的にはトランスミッションの前方に位置しているが、iQはトランスミッションケースの上に設置することで前後長を詰めている。燃料タンクもカーゴスペース下ではなく、シート下に置くことでオーバーハングを短縮。インテリアでは、助手席のダッシュボードを運転席よりも前にオフセットすることで、足もとスペースを確保。そういった工夫によって全長を最大で3000mmに抑えつつ、3+1シーターを実現している。

そんなiQに注目したのが、イギリスの高級車メーカーであるアストンマーティンだった。アストンマーティンの車種ラインナップは、V12エンジンを搭載した「DBS」や、まさに高級車というべき「ヴァンテージ」など、環境性能的には厳しいものが多い。そうすると将来的な企業平均燃費を考えたとき、不利になってしまう。そこで環境性能に優れる小型車を、と考えたとき、iQをベースとしたオリジナルカーの製作というアイデアが生まれた。

そこから2009年に発売されたのが、「シグネット」である。プラットフォームはiQをそのまま利用しているが、ボンネットやフロントバンパー、フェンダー、ヘッドライト、テールレンズなどをオリジナル化することで、アストンマーティンらしさを演出している。1.3Lの1NR型エンジンやトランスミッションなど機能面はトヨタ製そのままだが、消音材の追加やエンジンマウントの変更などによって、より高級さを実現している。

ちなみに販売価格は、500万円弱だった。iQはグレードにもよるが、130万円程度だったように記憶している。レザーインテリアとかでも200万円以下だったはずだ。そう考えると500万円というのはビックリのプライスなのだが、それでも当時の都内では、ちょくちょく見かけることがあった。これも名車のひとつ、といっていいクルマだろう。

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  • 塩見 誠(SHIOMI Makoto)
  • 塩見 誠(SHIOMI Makoto)
  • 1965年生まれ。学生時代からオートバイとクルマに熱中し、自動車雑誌編集ののちフリーランスライターに。これまでAE86トレノ、CC72Vアルトワークス、E38AギャランVR-4RS、1980年式シロッコ、CD9Aランサー・エボリューション、プジョー306スタイルなど、クルマを乗り継ぐ。オートバイはCB250RS、RZ250、ZZ-R1100、T-MAXなどつねに複数台所有。現在の愛車はフタ桁ナンバーのアルファ ロメオ156V6とサーキット遊び用のNCP91ヴィッツRS・TRDターボM、JA45クロスカブ。
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