国産スポーツカーを語るうえで欠くことのできないモデル
トヨタ「セリカ」は、2T-G、18R-GU、3S-Gと、4気筒のDOHCエンジンを搭載する系譜なのだが、その傍流に北米市場を意識した6気筒モデル、「XX」シリーズがあった。初代と2代目のみ車名が「セリカXX」となっており、以降は輸出名だった「スープラ」で統一され、今に至っている。最後の「セリカXX」となった、MA61はなかなかインパクトがあるクルマだった。どのようなクルマだったのか解説しよう。
最高速200キロオーバーを達成したセリカXX
まずエンジン。エンジンは当初ソアラ専用だと思われていた2.8Lツインカムの5M-G(170ps)を搭載。ソアラは欧州の本格的なGT、高級パーソナルクーペをターゲットに、トヨタの先端技術を惜しげもなく盛り込んだ入魂の1台だったが、セリカXX 2800GTはそのソアラのハッチバックスポーツ! というイメージで登場した(ソアラ専用色だと思われていた、スーパーホワイトも用意されていた)。
おまけにCMには名門ロータスの総帥コーリン・チャップマンが登場! ハンドリングチューンをロータスが担当したかのような雰囲気を漂わせていた(いわゆるハンドリング・バイ・ロータス。実際ロータスが関わったかどうかについては諸説あり)。
そのうえ、スタイリングもウェッジシェイプで、ジウジアーロ風というか、ロータス エスプリ風なデザインで完成度が高く、前面投影面積が小さく、Cd値0.35と空力特性に優れ、同じエンジンを積むソアラよりも10km/hは最高速度が伸びるといわれていた(実際、デビュー当時リミッターカットだけで200km/hオーバーを達成したのは、セリカXXのみ)。
HKSの手で国産チューニング初の300キロオーバーを達成
ちなみに国産チューニングカーで、はじめて300km/hの壁を突破したのも、このセリカXX。1983年、HKSが5M-GEUにギャレット製T04Bタービンをツインで装着し、ブースト1.2kg/cm2で600ps仕様にチューンしていた。
FRP製ブリスターフェンダーと前後にスポイラーを装着し、空力チューンを施したマシンは、「M300」と名付けられ、谷田部のテストコースで301.25km/hをマーク。悲願の国産初の300km/hオーバーを達成した。
また、漫画『よろしくメカドック』の「キャノンボールトライアル編」でも、主人公・風見 潤がチョイスしたチューニングベース車両として活躍。前期型はフェンダーミラーで登場したが、1983年のマイナーチェンジでドアミラーが標準化となった。
ちなみに輸出名がスープラだったのは、当時のアメリカの成人映画の過激度合いを「X」の連記で示していたため。余談だが、Twitterの公式アカウントがXに切り替わり、アイコンの青い鳥(=ブルーバード!)も二重線記号の「X」になってしまったが、あれは問題ないのだろうか?(PG-13、R、NC-17などの年齢制限があるからいいのか?)
シャシー性能は、ソアラの姉妹車として期待されていたが、ソアラほどお金がかかっているようには思えず、剛性感もイマイチ。4気筒セリカの3代目と同じ型式「A60」系と考えると、ベースはソアラではなく4気筒セリカと考えるのが妥当だった。
しかし、セリカXXはスタイリッシュでカッコよかったし、300km/h時代を切り開いてくれたクルマとして、国産スポーツカーを語るうえで欠くことのできない、大きな存在として記憶されている。