エンジンはバイパーから移植された8.3L V10!
果たしてトマホークをCarと呼んでよいものかは少し疑問が残る。とにかくスタイルはまるでバイクだからだ。それにしてもこれほどぶっ飛んだデザインのコンセプトカーが、かつて自動車メーカーから発信されたことがあるだろうか。これをデザインしたマーク・ウォルターズは、ルノーデザインからクライスラーに移ってきた男である。
そして、クライスラーではバイパーやプロウラーのような跳んだデザインが実現可能だ。そんな夢を持ってクライスラーにやってきたという。そしてその夢の結晶が、このクルマ(?)だった。ライダー(敢えてそう呼ぶ)が腹にかかえるようにして抱くのは、バイパーから移植された、8.3L V10。
そのパワーをストレートカットの足踏み式2速ミッションと、2本のチェーンを介して後輪に伝える。前後に2本ずつのタイヤを有するが、それらはトレッドと呼べるほどの広い間隔を持っておらず、2本の車輪が並行にリーンすることによって、まさにバイクのようなコーナリングを敢行する。でもタイヤが4本つくから一応は4輪車である。
燃料タンクのように見えるエンジン上の構造物は、その中にペントルーフ状に配置した2個のラジエターを内蔵し、フレッシュエアをポルシェ・ターボから移植したファンによってこの中に導き冷却する仕組みを持つ。恐ろしいことにクラッチはアシストなし。
実際に握っては見たものの、実際公道上の渋滞などに遭遇したら、ボブ・サップ(古い!)並みの握力がない限り、これを微妙にコントロールするのは難しい。ただ、アルミビレット風に全身が覆われたトマホークのスタイリングは、まるで現代芸術のように美しく、ただ飾っておくだけでも見る価値がある。マーク自身これでかなり飛ばしたようだが、理論的には260マイル(約418km/h)出るという。まあ出ないと思うが。
実際に跨った感想は以下の通りだ。
「白日の下で見るトマホークはやはりデカかった。オレのトマホークといわんばかりに跨っては見たものの、写真に撮られたその姿は、まるで大木にとまるセミ。大女をナニしようとする小男の風情でなんともしまらない。何とか足は届くものの、750kgの巨体を考えると、支えるのはまず無理である。そして今回わかったことは、バイクと同じレバー式のクラッチにはアシストが付いていないこと。かろうじて1回だけ握れたが、あとは握力不足で不可だった」
まあ走ってはいない。跨っただけのインプレである。
ちなみに単なるコンセプトカーで終わると思われていたこのクルマ。驚いたことに9台が製作されて実際に市販(55万5000ドル/当時レートで邦貨換算約6100万円)もされた。もちろん公道は走れないから広大な屋敷の庭で走らせているのだろう。それとも飾っておくだけか?
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