スズキとGMが提携していた時代のシボレー印コンパクトカー
シボレー「MW」、シボレー「クルーズ」。そう車名だけ聞いて「ああ、あのクルマね」とピンとくる人は果たしてどれくらいいるだろうか? 筆者も編集部からその車名を伝えられ、シボレー クルーズの方はなんとか車名と姿を思い浮かべられたが、シボレーMWの方は、迂闊にも「MW」のモデル名の部分は、その存在も含めて遠い彼方におぼろげながらしか記憶がなく、そのくらいだったから、カタログの発見にも少し時間を要してしまった。
じつは日本車OEMの王国だったGM
確認しておくと、シボレー クルーズはスズキ初代「スイフト」、シボレーMWの方は、当時のスズキ「ワゴンRソリオ」をベースに仕立てられたモデルだった。シボレーは言うまでもなくGMの1ディビジョンだが、スズキがGMとの資本提携の関係にあった時代に企画された車種。両車の日本市場での販売期間はシボレーMWが2000年9月~2010年12月、シボレー クルーズは2001年11月から2008年9月と、(こう言っては何だが)案外と長期間にわたってのことだった。
なおシボレーMW&クルーズとは別に、GMでは1989年から1997年にかけて、北米市場でコンパクトカー専売の販売チャネルのGeo(ジオ)を展開していた。ここでの販売車種は「メトロ」(スズキ「カルタス」)、「スペクトラム」(いすゞ「ジェミニ」)、「トラッカー」(スズキ「エスクード」)、「ストーム」(いすゞ「PAネロ」)そして「プリズム」(トヨタ「カローラ」)と、日本車のOEM車が目白押し状態だった。
ワゴンRソリオにボウタイバッジを付けたシボレーMW
さてシボレーMWとクルーズに話を戻して、まずシボレーMWから取り上げると、このクルマはすでに触れたスズキとGMの資本提携後、GMの世界戦略車の役割も果たす初のコラボモデルとして登場した。見てのとおり(ややこしいが事実に沿って記述しておくと)初代ワゴンRから派生したワイド版のワゴンRワイドの後継車種で、初代同様に2代目ワゴンRから派生し、ワゴンR+→ワゴンRソリオ→ソリオと車名の変遷をたどったモデルの1.3Lエンジンを搭載した上級グレードがベース。
上級グレードと断ったのはソリオには顔違いのノーマルグレードも用意があったため。(ここは逆説的に)シボレーMWの、シボレーならではのデザインとして採用していた上下2段のヘッドランプのほか、大型フロントグリルなどは、そもそもソリオの上級仕様とは共通デザインとなっており、シボレーのシンボルのボウタイのバッジでシボレー車化を果たしたバッジエンジニアリング車ということだった。
話は逸れるが、スズキワゴンRに「スティングレー」なるモデル名が存在したことがあり、登場時に思わず「えっ、コルベットじゃなくて?」と不躾な問いを投げかけ、当時の広報担当者を(電話越しに)ムッとさせてしまったことがあった。
シボレーMWではほかに内部に円筒状のデザインを採用したリアコンビランプ、アメリカンなデザインのアルミホイール等が専用。装備では本革シート(リアは合皮)、センターパネルまわりを専用デザインとしたインパネなどを採用。
搭載エンジンは1.3Lの4気筒DOHCで88ps/12.0kgmのスペックはソリオの1.3Lモデルと共通だった。当時のサターンの販売店での取り扱いでスタート、途中、発足予定だったGMの販売チャネルが形にならず、結果的にスズキ系ディーラーで取り扱われつつ、意外といっては失礼ながら足かけ10年ほどのモデルライフを過ごしたモデルだった。