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シトロエン「BX」が1300万円! 高額な理由はグループBのホモロゲマシン「BX 4TC」だったからでした

シトロエン「BX」が1300万円! 高額な理由はグループBのホモロゲマシン「BX 4TC」だったからでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

グループBホモロゲート車両としては安価な1300万円で落札

シトロエンBX 4TC セリエ200の生産は2つのシリーズに分けられ、第1シリーズは「XL00……」のシャシー番号で、第2シリーズは「XL30……」で始まる番号で識別されるという。

今回「Monterey 2023」の特別企画「The World Rally Classics Collection」から出品された素晴らしくオリジナルな個体は、シャシーナンバー#XL0069。すなわち、ファーストシリーズの最後の1台であるとともに、現存が確認されているBX 4TCロードカーの中ではもっとも新しいものとみなされている。

ボディカラーは、このモデルのデフォルトであるホワイト。インテリアは同時代のBXに設定されていたスポーティバージョン「BX GTi」などと変わらない、ソフトな黒いファブリックで仕立てられている。

BX 4TC セリエ200は、当初からフランス国内市場向けに販売される予定で、この個体も2000年にパリのコレクターに売却されるまで、フランス某所在住の初代オーナーの手元にあった。2人目のオーナーとともにパリで過ごした時期は短かったようで、2000年11月にトゥーロン近郊に住む3人目のオーナーに売却され、その後18年間は彼のもとで保管された。

そして2018年11月、#XL0069は米国在住のコレクターによって購入され、大規模な整備が施されることになる。このサービスにはクラッチとタイミングベルトの交換が含まれ、当時のオドメーターは5万2532kmを記録していたという。

シトロエンBX 4TC

2022年にさる専門業者を介して現オーナーに譲渡されたものの、2018年の大規模サービス以来660kmしか走行しておらず、RMサザビーズ北米本社が公式カタログを作製した際の走行距離は、5万3192kmだったとのことである。また、オリジナルの工場マニュアル、ジャッキ、スペアタイヤ、豊富な履歴ファイルが付属しているのも、オークションにおいては重要なトピックである。

狂瀾のグループB時代の中でも特別な異彩を放つとともに、21世紀に入ってシトロエンが世界ラリー選手権を制覇する先駆けともなったBX4 TCは、グループBの中でも最も希少なモデルである。実際、全世界で現存するBX 4TC セリエ200はわずか30台程度と考えられており、この完璧な鑑定が施された個体の販売は、非常にエクスクルーシブな「クラブ」に参加する貴重なチャンス。熱心なグループB愛好家であれば、コレクションにくわえるべき1台……といううたい文句を添えて、RMサザビーズ北米本社は10万ドル~15万ドル(邦貨換算約1480万円〜2220万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが、実際の競売ではエスティメート下限も下回る8万9600ドル、現在の日本円に換算すれば約1300万円という、かなりシビアな落札価格でハンマーが落とされることになってしまった。この価格は現在の国際マーケットにおける、ほかのグループBホモロゲートモデルの相場と比べると、明らかに安価なものである。

この理由として考えられるのは、WRC選手権における活躍があまりなかったことも大きな要因だろう。そのうえ、ライバルたちの市販バージョンがエクステリア/インテリアともにエキゾティックなスーパーカー的魅力を備えていたのに対して、BX 4TCはアクの強いエアロパーツなどで存在感は示していながらも、あくまで小型量産車であるシトロエンBXの改造車としての印象が強い。

だからこそシトロエン愛好家には多く見られる、あまのじゃく気質のエンスージアストにとってはかなり魅力的とも思われるのだが、やはりそんな変わり者は決して多くないということなのだろうか……?

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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