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足だけで運転してエコラン競技! 高校3年生の父と二人でのチャレンジに密着【エコマイレッジチャレンジ2023】

小柄な松永さんが座るドライバーズシートは、車体の右側。サブドライバーシートのほうが大きく、車両前方に乗車位置があるので、わかりにくいが、メインドライバーはその後方で操作することとなる

燃費を競うエコマイレッジ チャレンジがもてぎで開催

「本田宗一郎杯 Hondaエコマイレッジ チャレンジ2023 第42回全国大会」が、栃木県にあるモビリティリゾートもてぎで2023年9月9日(土)~10日(日)に開催された。「君はガソリン1リットルで日本一周できるか?」をキャッチフレーズに、規定周回数(距離)を決められた時間の中で走行し、そこで使われた燃料消費量から「燃費」を算出して燃費性能の高さを競うというこのエコマイレッジ チャレンジに、今回両腕のない高校生が挑戦した。

完全オリジナルの操作系を備えたマシン、その燃費記録は145.908km/L

2日間の予定で行われる「Hondaエコマイレッジ チャレンジ」は今回、台風13号の影響もあって練習日の走行スケジュールが大きく変更となったものの、決勝自体は好天に恵まれて無事に開催された。

ホンダの50cc 4ストロークエンジンを使用し、それぞれが製作したオリジナルマシンで競われる。「中学生」、「高校生」、「大学・短大・高専・専門生」、「一般」の4クラスに「2人乗りクラス」、そして150cc以下のホンダ製4ストロークエンジンを使用した「ニューチャレンジクラス」、「二輪車クラス」の計7クラスのレースが開催された。

その歴史は1981年に、三重県の鈴鹿サーキットと埼玉県の桶川で始まった「Hondaエコノパワー燃費競技大会」から始まった。この際の記録は、鈴鹿が292km/L、高速訓練コースを使用した桶川での記録が621km/Lであった。

それ以後、記録は向上していき、1985年には1000km/Lを越え、現在の最高記録は2011年にもてぎで記録された3644.869km/Lとなっている。

わずかな燃料で走行するわけで、そのエコランにはいろいろなポイントがある。走行時は必ずしもエンジンをかけ続けているわけではなく、頻繁にエンジンを停止させ、もちろん、駆動系の抵抗は徹底的に低減してあり、ボディ形状やエンジン効率も重要。もちろんドライバーの重量や技量も重要である。ちなみに今回も全国大会はもてぎのオーバルコースを使用して行われた。

神奈川県立向の岡工業高等学校は、神奈川県川崎市多摩区にある公立の工業高等学校である。今回も同校の自動車部が、Hondaエコマイレッジ チャレンジに出場した。特徴的な3輪の細長い車体での「Group II(高校生クラス)」に22回目の挑戦を行うAチーム、そしてスーパーカブ系の車両を持ち込んでの「2輪車クラス」にはBチームが参戦。そして今回は自動車部Cチームとして「二人乗りクラス」にもエントリーし、同校初となる3つのカテゴリーへ挑戦をすることとなった。

サブドライバーには父親が乗り込む

その「2人乗りクラス」のドライバーである松永健由さん。両腕がない状態で生まれ、生活は足を使ってすべてをこなす。この高校の機械科の3年生であるが、普段の学校生活の中でも、足を使って授業のノートを取り、作業も同様にしている。向の岡工業高校生として最後の挑戦に、自身がドライバーとして参戦することとなったのだ。「来年は出よう」と2022年のエコマイレッジ大会直後に決めていたそうだ。

2022年、2021年と同校から参戦はしていたものの、マンパワーの問題で普通の3輪マシンで手いっぱいだったようだ。しかし、2023年は3年生で最後だし……ということで新たに車両を製作した。

普通に考えれば、松永さんは2人乗りのサブドライバー役ということになるだろう。しかし「それじゃつまらないよね」ということで、「出場するためにどうしたらいいか?」、「どうしたら松永さんが運転をできるか?」を考えに考えたという。

松永さんが運転する=足で操作できるようにするのである。加減速についてはペダル操作でイケるということとなった。しかしステアリング操作については、ずいぶん悩んだという。体重移動であったり、足でのステアリング操作であったり、いろいろな操作法を検討したが、結果的にはドライバーズシートを回転させる機構を持たせ、シートの下にワイヤーを通しその回転動作にステアリングが連動するようにしてステアリング操作をするシステムとなった。

これだけでは危険なので、バックアップとして、サブドライバー席には普通のハンドルも用意し、操作ができるようにしてある。アクセルについては、ドライバーズシートに座る松永さんが操作することとなる(サブドライバー席には緊急用のブレーキレバーだけ備え付けてある)。

ペアを組み、万が一の時のサブドライバーとして乗り込むのは、同じ自動車部の学生ではなく、松永さんのお父さんである松永敏幸さん。高校3年間、家族の支えもあったということで「お父さんと一緒に出場しては?」との先生からの提案があって、このペアでの参戦となった。

7クラスが決勝を走行するこのエコマイレッジ チャレンジ。午前9時10分から最初のクラスが走行を開始するが、2人乗りクラスの#602 向の岡工業高校 自動車部Cは、午後12時15分にスタート。もてぎのオーバルコース(1周1.5マイル=約2.4km)3周の計測を行った。

途中で止まることなく1周5分のペースで淡々と走り続けた602号車は午後12時31分には無事にゴールに戻ってきた。燃料は277.10gでスタートし、ゴール後の計測では242.09gとなった。密度は0.745で計算された今回、その消費量は46.990cc、燃費は145.908km/Lという結果となり、2人乗りクラス3位を獲得した。

「今年はマシンを作るのが精いっぱいだったので、今後はカウルをつけて空力を考えたいし、エンジンもノーマルのまま。まだなんの調節もできていない。まだまだ進化幅はあるので、それに挑戦していくのもありだと思います」

と語る松永さんは進学することになるわけだが、自動車部の先生もこの2人乗り車両の進化に前向きだ。

「そこ(進学先)でもさらに乗っていきたいというのなら、チームOBとして継続しての参戦も協力したいですね」

またHondaエコマイレッジ チャレンジは、2024年からはカーボンニュートラル燃料を使用することになるため、しばらくは各チームがマシンにさらに手をかけていくことになる。この2人乗りマシンも今後さらに進化をして記録を伸ばしていく姿に期待したいし、見守っていきたい。

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