安易に「SUV」とラベリングするとトヨタの本意を見失う
トヨタの最上級ショーファーカーである「センチュリー」が2023年9月6日に発表されたことは、すでにさまざまなメディアを通してご存知のことと思う。そういった情報を見ていてどうもなぁ、と気になっていたのは、「センチュリーがSUVになった」とか、「センチュリーをSUV化」した、とかいう言い方だった。いやさぁ違うじゃんそれ、と思うのだ。
これからの未来のショーファーカーの姿
というのも今回発表されたのが「センチュリー」で、従来型は「センチュリー(セダン)」だよと、プレスリリースにはっきりと書いてあるのだ。これが意味するところは、今後の本道は今回発表されたモデルである、ということ。今後続いていく未来においてのショーファーカーはこれだ、ということを表してるのがこの車名のはずだ。
もともとセンチュリーというモデルは1967年に、欧米のショーファーカーに範を取りながら、日本の高級車としての存在感や美しさを徹底的に追い求めることから誕生した。そのコンセプトは30年間つくり続けた初代モデルと、1997年から2017年まで20年間製造した2代目モデル、そして2018年から今もつくり続けている3代目モデルまで、変わってはいない。
クルマの中での過ごし方の変化に対応
しかし初代モデル登場からほぼ60年が経とうとしている今、人とクルマの関係性は大きく変わってきている。センチュリーの「人中心」という設計思想は変わらなくても、その「人」が移動中にどうやって過ごすのか、という部分が変わってきているのだ。考えてみれば車載電話が一般的となったのは1980年代後半から90年代にかけてのことだった。その後携帯電話が普及していったが、あくまで通話がメインでしかない。
しかし今は、移動中にビジネスメールのやり取りをすることだってできるし、インターネットへのアクセスも簡単だ。そういう場合の使い勝手もそうだし、さらに言えば、移動時間を休憩に充てたい場合や、映像コンテンツや音楽を愉しみたいときのサウンドクオリティを考えたときにも、車室空間には自由度があったほうが、より質の高さを実現しやすい。
また、たとえば出迎えを受けたときの、乗降の所作の美しさという部分でいうと、セダンタイプよりも座席の位置は高いほうがいい。これら今後の「人中心」思想にマッチするものは何か、と考えたとき、選ばれたのがこういった箱形ボディ形状だったのだ。