ボディのリフレッシュにはオールペンかラッピングか
年式の旧いクルマはボディカラーが退色したり、表面の傷が目立ってきてしまうもの。そんなクルマのボディのリフレッシュを考える際に、オールペンにするかラッピングにするかは悩ましいところです。今回はその方法やメリット、デメリットについてお伝えします。
新車の納車時に赤錆が出ていたアルファ156
1998年モデル、つまり最初期型のアルファ ロメオ「156」に乗っているワタクシですが、数年前から、いや10年ほど前から決めかねていることがあります。それはボディのリフレッシュです。まずはなにをどう悩んでいるのかをお伝えするために、現状の156のボディを説明しておきます。
この156は1998年4月に当時のディーラー、アレーゼで注文をし、10月に納車されました。当初は12月初旬という納車予定でしたが、どういうわけか10月下旬に日本に到着。登録が終わって納車の日、わくわくしながらディーラーに行って各部をチェックしていたら、トランクリッドの縁の部分に、ぐるっと1周赤錆が出ていました。そのとき、営業担当者と工場長、そして自分の3人が無言になったのをいまでも憶えています。もちろんこれは、向こう持ちで錆落としと塗装のやり直しをしてもらい、あらためて納車となりました。
イタリア車は退色しやすい
その後これまでの25年間で、20万km以上走っています。正確な走行距離は、だいぶ前に距離計が壊れたことがあり、メーターを交換するまでの約半年間、走行距離が測れなかったので細かい数字まではわかりません。現在も含め、クルマを複数台所有しているときが多かったですし、バイクもほぼ並行して持っていましたから、まぁこんなもんでしょう。
そうやって25年乗ってきたこの156ですが、ボディの塗装がだいぶやられてきました。イタリア車の赤が退色しやすい、というのはよく聞く話ですが、メタリックシルバーも直射日光下での駐車や、高速道路を走る機会が多いということからか、ナチュラルへアラインシルバー的な、輝きはなく前後方向に向かって薄い筋が入ってしまっている感じになっています。
そこで最初は、オールペンをしてもらおうと考えました。しかし同時に、フィルムを使ったラッピングはどうだろう? とも思ったのです。これはそれぞれに、良いところもあればツラいところもあります。その違いを確認しておきましょう。
本格的なオールペンは高額になる
まずはオールペンから。日本語では全塗装、などといいますが、このオールペンは大きく分けるとふたつのやり方があります。ひとつはガラスやドアなど外せるものはすべて外し、エンジンも降ろした状態で塗装をするという方法です。このやりかたは耐久性やクオリティに優れています。元のボディカラーと違う色にするときにも、たとえばドアを開けると元の色が見えるということもなく、きれいに仕上げてもらうことができます。
ただし、手間とお金がかかるというのが難点です。オールペンに必要な代金には、塗装に関する技術料や部品の脱着料、消耗品であるクリップなどの部品代など加えて、塗料の代金も含まれています。この塗料の代金は塗料メーカーによって、また色によっても違ってきますが、使用量が増えれば当然そのぶん高額になります。すべてをきれいに塗る、というのは、あたり前だけどお金が掛かるのです。
オールペンで費用を安く済ませる方法
この156の場合、現在ではウェザーストリップなどといったゴム系部品が欠品しています。また、旧いクルマなので樹脂系部品の劣化などもあり、現状は問題がなくても取り外すと割れる、という可能性もあります。そういう場合に考えられるのが、窓やライトなどをマスキングした状態で塗装をおこなう、という方法です。
このやりかたは、元の色と同じか、あるいは同系色でペイントするならボンネットやドアを開けたときの違和感が小さくてすみます。塗装代も塗料の使用量が少なく、また大物を外すという作業もないため、完全なオールペンと比べれば安く済みます。ただ、このやりかたはあくまでも見えている部分を塗るだけなので、端から塗装が剥がれてきやすい、という傾向もあります。
仮にですが、完全に部品を外して塗るオールペンが新車時に近いクオリティで20年持つ、というものだとするなら、このやりかたは10年はいけるかも、という感じでしょうか。もちろんこれは、塗装をおこなってくれる人のスキル次第で大きく違ってくるものでもあります。だからこそ、オールペンを考えているならよくよく調べて、上手な人、上手なお店に依頼をしましょう。もちろん、そのぶん技術料は高くなりますが。
オールペンの代わりにラッピングという手段も
ゴム系部品がない、という現実から、オールペンをする場合にはマスキングして見えているところだけを同色で、となってしまう156。であるならラッピングできれいに見せるという手もあります。
ラッピングというのは、耐候性が高く伸縮性のあるプラスチックフィルムをボディに貼って仕上げるもの。路線バスや電車の広告車両などでも使われていて、フィルムはさまざまな文字やイラストなどを印刷できるため、イタ車ならぬ「痛車」の多くもラッピングで仕上げています。レーシングカーのスポンサーネームやカラーリングなども、ラッピング仕上げがほとんどです。高級車などの場合には、新車時のボディを保護するという意味から、納車されたらすぐに全面ラッピングをする、ということもあるそうです。そうしておけば、フィルムを剥がせば新車時のボディが現れるわけで、クルマを大事にしたいということに加えて、リセールという部分でも有利なのかもしれません。
ラッピングには欠点もある
このラッピング、フィルムを貼るということは、当然端のほうは剥がれやすい、ということになります。ラッピングを施工する際には、ドアやボンネット、トランクリッドなどの端の部分は折り込んで剥がれにくくしていますが、それでも温度変化の影響によってわずかとはいえフィルムが伸び縮みしますので、数年単位で見た場合には剥がれが気になってくるはずです。とはいえ、それは見える部分だけのオールペンでも同じといえば同じ。必要となる予算的にも、全面ラッピングと見える部分だけのオールペンならほぼ同等です。
問題となるのはやはり費用
ではこのどちらを選べばいいのか、です。まず見える部分だけのオールペンをするのであれば、純正で採用されているスタンドックス製の塗料で元の色と同じメタリックシルバーにしたいと思っています。ラッピングを選ぶ場合には、せっかくなのでマットシルバーのフィルムを使ってもらえば、いま風でいいのではないでしょうか。
しかし問題は、どちらを選ぶにしても必要となる、およそ30〜50万円といった費用。なにせ来月は「ヴィッツターボ」の車検、年明けすぐにはこの156も車検が控えています。まずはそちらをクリアしなければ走ることさえできません。いっそこのまま、ナチュラルへアラインシルバーでもいいか、とさえ思いつつ、こうやって悩んでいるときが一番楽しいのかな、などという思考に陥ってしまうのは、機能的にとくに問題がなく走れてしまっているからなのでしょう。