新車価格は約3億3730万円
2023年8月17日〜19日、RMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてマクラーレン「スピードテール」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
マクラーレンF1と同じ3人掛けシート
2023年のRMサザビーズによるモントレー・オークションには、2台のマクラーレン・アルティメット・シリーズが姿を現した。まずステージに迎え入れられたのは、ロットナンバー239の2020年式「スピードテール」。そしてオークションがさらに進み、ロットナンバー344には2015年式「P1」が登場するというスケジュールである。このP1に関しては別のコラムでその詳細を紹介するので、ここではあのF1ロードカーの遺産を21世紀に再構築したとマクラーレン自身が語る、スピードテールを解説する。
マクラーレンが「BP23」の開発コードで、かつて生産したF1ロードカーのコンセプトを継承するハイパーGTを開発中であるという噂は、2016年11月に発表されるかなり以前から、世界のメディアを賑わせていた。
F1ロードカーと同様に、軽量なカーボンファイバー製のモノコックを中心に組み立てられ、キャビンはドライバーを中心に、その左右に各々1名分のパッセンジャーシートを配置するという特徴的な3人乗りのレイアウト。F1ロードカーでは、それは徹底した重量物の集中と重量配分、またキャビンからの視認性を意識した策だったが、スピードテールでは高性能GTとして快適な、そして乗降のしやすさを目的にそれが継承されたと説明されていた。左右のドアはもちろんディヘドラルドアで、エレクトリックのオートマチック開閉システムも装備された。
スピードテールの外観は、その車名にも表現されているようにデザインとテクノロジーを融合させ、とくにリア部分では大胆なボディワークを実現したものである。前輪には空気抵抗を減少させるために、軽量なカーボン製のスタティックカバーがフィットされ、リアにはアクティブウイングが装備されている。
走行モードで「ヴェロシティ」を選択すれば、車高は約3.6cmローダウンし、アクティブ・エアロダイナミクスは最高速重視のセッティングに自動的に変化する。同時にHDカメラによるサイドビューミラーも格納される仕組みだ。
出品車の走行距離は約285キロ
スピードテールの販売は、当然のことながらマクラーレンによって事前に選ばれた優良なカスタマーに対してのみ行われた。今回の出品車は106台が生産されたスピードテールの中では72番目にあたるもので、2020年6月にサンフランシスコのマクラーレンを通じてデリバリーされた。
参考までにスピードテールは、アメリカ合衆国においての公道走行は許可されておらず、NHTSA(アメリカ合衆国運輸省)により「ショーまたは展示」のために、年間2500マイル(約4000km)までと制限されている。
したがって出品車の走行距離もわずか177マイル(約285km)と新車からわずかな数字を刻むのみ。出品者と落札者は今後名義変更前にNHTSAの承認を得ることが必要であり、NHTSAによる検査は今後新車での生産から25年が経過するまで続けられるという。
そのような事情はあっても、やはり723psの最高出力を誇る、4LツインターボV型8気筒エンジンにハイブリッド・パワートレインを組み合わせ、403km/hの最高速と13秒という0-300km/h加速を可能とするスピードテールの魅力は大きい。
エレクトリック・モーターとバッテリーはいずれもマクラーレンのフォーミュラーEテクノロジー・グループの開発によるもので、モーターの312psを追加してスピードテールは最大1035psの最高出力を発揮する。
RMサザビーズが見込んだ予想落札価格、220万〜260万ドル(邦貨換算約3億1900万円〜3億7700万円)に対してのハンマープライスは231万5000ドル(邦貨換算約3億3570万円)。新車価格が232万6000ドル(邦貨換算約3億3730万円)、加えてMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)への特注オプション代金が10万7363ドル(邦貨換算約1560万円)も投じられたというスピードテールの72号車。それを考えると、この落札価格も順当なレベルで落ち着いたといったところが、まずは第一印象ではないだろうか。