各部のディテールは空力のために周到な形状に仕上げられていた
もちろん実車は、とにかく低く、抑揚に満ち、前後左右、上下と、どの角度から眺めても強烈な個性を発散する姿が、理屈抜きで見るものを魅了した。エアロウエーブルーフ、3次元複合曲面ウインドウシールド、複合曲面フラッシュドアウインドウ、サイドミラーの長いマウントアームをはじめ、各部のディテールは空力のために周到な形状に仕上げられていた。
リトラクタブルヘッドライトも、FC型の平行四辺形動作から円周運動方式に改め矩形のハロゲンライトで高さを抑え軽量化も図られた。ボンネットはFC型に対して70mmも低められ、左右のフェンダートップはドライバーからの見え方が重視されデザインされた。
一方で見栄えにもこだわり、ドアハンドルは、ドアパネルに置いた場合にパネル面に歪みが生じるのを嫌い、ウインドウ後方に設置されていた。ボディに関しては、FC型に対して全長が40mm短くなった上でフロントオーバーハングは125mmも短縮。全幅は1760mmとワイド化し、全高は40mmも低められ1230mmとされていた。Cd値は0.30、幅のあるBピラーとラウンドしたガラスハッチに初代からのRX-7らしい要素が見てとれたとはいえ、1990年代へ向けての進化感がハンパない……そんなスタイルだった。
インテリアについても思いきったデザインが採用された。ドアトリムは左右で非対称デザイン、センターコンソールも上面に傾斜が付けられるなどして、あくまでもドライバー中心にデザインされていた。カタログを開くとまず「スポーツカーに、昂る」のコピーとともに、対向ページには、恐らく夕陽が斜めに差し込むメーターのアップの写真が使われているが、着座位置もとにかく低く、スポーツカーらしいストイックさにあふれるムードは今でも心に残る。
最後まで色褪せることなくモデルライフを全うした
エンジンについては、シーケンシャルツインターボを備える13B-REW型2ローター(654cc×2)ロータリーを搭載。スペックは255ps/6500rpm、最大トルクは30.0kgm/5000rpmを発揮する。トランスミッションは5速MTまたは4速ATの設定で、5速MT(R152型)は2、3速のダブルコーンシンクロ化、ショートストローク(縦50mm、横30mm)などが特徴である。なおエンジンについては、最終的に280ps/32.0kgmにまで性能向上を果たした。
シャシーは4輪ダブルウイッシュボーンで、前後ともアッパー/ロアアームなど主要構成パーツはアルミ製(溶湯鋳造、鍛造)とした。4輪ダイナミックジオメトリーコントロール機能を採用し、クルマの走行状態に最適なトーを前後輪に与え、リニアさと安定性を両立させたものとなっていた。NA型ロードスター以来の、トランスミッションとディファレンシャルを結合するパワープラントフレームも採用している。
3代目・FD3S型RX-7は2003年まで12年と長く生産が続いた。この間にブランド名がアンフィニからマツダに変わったほか、NC型ロードスターがそうだったように、冷却効率の向上を目的に、フロントバンパー開口部形状が5角形のデザインに改められたほか、可変機構付きリアスポイラーが採用されるなどしている(1998年)。それ以外にも細部の改良、新規グレードの設定などが逐次行われ、最後まで色褪せることなくモデルライフを全うした。