世界で一番最初に製品化したという自負
LED球で成功を収めた堀氏ではあったが、一番心に残る自社製品に関してのエピソードは、いい話ばかりでもないようだ。
「ヘッドランプにはH4とかH8とかありますよね。それをなんとかLEDにできないかとずっと開発してたんです。それこそ光学分析の数百万するソフト、一千万円近い機材を数台導入したりして。それで3年も4年もかけて開発していたんです。
なんとか形なるんじゃないかと見えてきた時に、台湾よりもいい設備を持っていたところが日本にあって、そこに作ってもらうことにしたんですね。しかし、出来上がってきたものは、こちらが指定している部品と違うものを、間に合わせのために使ってしまっていて、回収騒ぎのようなことになったんです。指定どおりの部品でに作ってくれていたら、何も問題はなかったんですけれども。
それがいい意味でも悪い意味でも話題になりましてね。いままでにない画期的だったもので世間に広がったんです。そしてわずか3カ月後には他社が同じような製品を出してきたんです。依頼した工場が、ほぼほぼ完コピして他社製品を作っちゃったんですね。そういう世知辛い思いもしたんですけど、世界で一番最初に製品化したという自負はあるんです。まあいろいろありましたけど、結果みんなが喜んでくれているということで、自分は満足をしています」
特許を申請すればよかったのにと考えてしまいそうだが、LED素子そのものの発明ではないため、特許申請は難しいと判断したのだそうだ。
安心・安全、そしてメーカーとしてのモラル
「NAPACに加盟したのも、意識を高めてこの業界全体の質──考え方・モラル──をあげて、みんなで協力して正しいもの、いいものを売りましょうという姿勢に賛同したからです。粗悪なものであったりとか、レギュレーションに合わないモノはやめましょうということに取り組んでいる団体なので。その考え方には大賛成です。バレンティの商品はすべて、国連欧州経済委員会が作成したECE基準に準じることを前提に製品化しています。
あと海外への販売に力を入れようと思っていますが、そうすると輸出先のレギュレーションをクリアしなければなりません。カスタム品だからといって無視するわけにはいかないんです。ヴァレンティはきまじめに輸出先のレギュレーションに合わせています。そういう意味でもNAPACの考え方と同じですし、こうした考え方をNAPACの一員として広めなくてはならないと思っています。どうしても『改造は……』と、思われがちなんですけど、そう思われないような活動をしていきたい、NAPACと一緒に活動をさせていただきたいと思ってます」
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観賞魚用のアイテムからスタートしたコラント。そして自動車用の部品を手掛けるようになってようやく経営は軌道に乗るようになる。さらにいま、おせち料理や犬用のペットフード、それにコスメに関するアイテムなど、事業は多岐にわたって展開中だ。
「僕がいいなとか、どうしてこういうものがないんだろうとか、こういうものが欲しいな、というのを気づく範囲で、自分が携わっている範囲内でどんどん作って、それをみんなに提供して喜んでもらいたいですね」
そう語る堀氏。「ないものは作っちゃおう」という精神で、さらに人々を喜ばせることになるだろう。