整備記録簿が役に立つ
これは特殊な事例かも知れないが、安さのみを追い求めていると、状態がきちんと判断できなくなる可能性がある。一般的に中古車の状態を知るための指標は、年式や走行距離、修復歴となるのだが、同じ年式でも屋根付駐車場での保管と屋外保管では塗装や内装のヤレ具合に違いが出てくる。
また同じ走行距離でも、長距離走行がおもな個体と短距離ばかりで使っていたものでは、エンジンの内部状態が違ってくる。「オイル交換などのメンテナンスをきちんとおこなっていた長距離走行車と、ろくにメンテをしていない短距離走行車のどちらがいいのか?」と聞かれると、だったら長距離のほうがいいわ、となる。
こういったクルマの状態が分かるのが、整備記録簿だ。そのため状態のいいクルマを買いたいのなら、整備記録簿が残されている個体を探し、その記録簿の記載を確認してどういったメンテナンスをおこなってきたのか、そのクルマの履歴を調べたい。
ただ、市場に流通している中古車の多くは、整備記録簿がなかったりしがち。その場合にはたとえばエンジンのオイルフィラーキャップを開けてスラッジの付着具合を見るとか、試乗してトランスミッションの繋がり方、異音があるかどうかなどを確認して、状態を判断するしかない。そんなの難しくてできない、という場合には、保証付きのディーラー中古車を買うのがベターだろう。
さらに、修復歴があるかどうかも重要なポイントのひとつといえる。修復歴というのは、クルマの骨格に当たる部分にダメージを負った経歴があるかどうか、ということ。フレームやクロスメンバー、インサイドパネル、ピラー、ルーフ、室内のフロアパネル、トランクフロアパネルが修正および交換されていると、修復歴あり、となる。
しかしネジ止めされている部分、たとえばフェンダーやドア、バンパー、ボンネットなどが修理されていても、修復歴にはあてはまらない。たんに修理されたことがある、というだけだ。あくまで骨格部分がやられたことがあるかどうかが修復歴で、これは正直、中古車店の店頭でクルマを見ただけではわからない。
そのためJU(一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会)では、販売する中古車に修復歴がある場合はコンディションノートへの記載を義務づけていて、もしこの記載なしに修復歴車を販売した場合には、不具合を知ってから1年以内であれば問答無用で契約解除ができる、としている。
中古車の状態を判断するのは難しい!
えらく難しい話をしていると思われるかもしれない。しかし実際、中古車の状態を判断するのは難しいのだ。たとえば社用車などは、自分のクルマではないためか、まともにメンテナンスをしていないものが多かったりする。役所のクルマだって、公的な車両のくせに車検切れ運行なんていう、あってはならないことをしているケースがあるくらいだ。そういう履歴がわからないというのが中古車のもっとも不安なところ。中古車を買う場合には、安いのには理由があると思い、なにかあったら直すというつもりで予算を用意しておくのがベストだ。
そうでなければ、ディーラーが状態を確認して保証をつけて販売しているディーラー中古車を買う、というのがベターとなる。ただ、ここはダメだけどあとはいい、というクルマを安価で見つけたときのうれしさは、一度経験すると病みつきになってしまうもの。筆者自身も、2台目の「ヴィッツ RS TRDターボM」で現在も愉しんでいるわけだし。決して安い買い物ではないのだが、「一度や二度の失敗でめげずに、中古車ライフを愉しむ人がいてもいいんだけどなぁ……」というのが本音だ。