サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

【良質な中古車の選び方】自動車ライターの実体験に基づくコツを伝授! 初心者のための中古車購入ガイドvol.3

クルマの状態が分かる整備記録簿は確認しておきたい

愉しい中古車ライフを送るには

揺れ続ける中古車業界ですが、3回にわたってお送りした中古車購入ガイドも最終回となりました。第1回は中古車を購入する選択肢として、正規ディーラーや街道沿いなどにある中古車を専門に扱っている自動車販売店、オークションなどを取り上げました。第2回は中古車専門店にフォーカスし、小規模店から全国展開しているような大規模な店まで、規模別に賢い選び方を紹介。最終回は個体の選び方をお伝えします。ライター自身の体験談を交えたリアルな内容に注目です。

※写真は全てイメージです。

保証期間ありのクルマを購入

最終回は個体の選び方だ。といってもこれは非常に難しい問題である。一例を挙げると、つい2年半ほど前、筆者自身が失敗しているからだ。

当時筆者は、サーキット遊びができるクルマを探していた。結局トヨタ「ヴィッツ RS TRDターボM」に狙いを絞ったのだが、最初に見つけた個体は35万円と相場よりも20〜30万円ほど安いものだった。そのクルマは車検切れだったため試乗ができず、敷地内を5mほど前後させただけだったのだが、そのときは真っすぐ進んで真っすぐ下がり、クラッチやトランスミッションなど駆動系の違和感もなかった。

ボディは塗装がボロボロでハッチゲートから水の浸入もあったが、それはゴムやショックアブソーバーを換えればいい。シートもボロかったがフルバケットシートにすればいいし、13万km走っていたが異音や匂いもなかったし、オイル漏れや冷却水漏れもなかった。結局、保証期間が6カ月/1000km付いていたこともあって購入を決めたのだった。

しかしナンバーをつけてお店からの帰り道、高速道路での速度の伸びがあまりに遅かった。これはおかしいということで自宅近くの懇意にしているショップに持ち込んでチェックした結果、タービンが焼き付いて回っていないことが判明した。ターボ車なのにブースト圧がかからないのは遅くなってあたり前。下手をすれば「ヴィッツ RS」のNAよりも遅かったかもしれない。

そこですぐに販売店に連絡をし、タービン交換もしくはリビルトタービンへの交換を保証範囲内としておこなっているか問い合わせた。すると販売店は、もちろんですと即答。すぐに新品タービンやリビルトタービンを探したのだが、新品はとうの昔に欠品していて、リビルトタービンも国内で見つけることができなかった。こういうところが限定車のつらいところでもある。

結局この35万円号は、販売店に引き取られていって返金してもらい、あらためて別の個体を探すこととなった。この事例での反省点は、走れないんだったら吸気圧を測ればよかった、ということだが、実際にそんなことまではできるわけがない。第一そんな測定器械は、プロショップでもない限り持っていない。

だからこそ、保証付きでよかった。もしこれが保証なしの個体だったら、返品もできないし返金もしてもらえず、タービンを外して修理に出し、上手く直ればお金はかかるけどよし。仮に修理不能だったら、お金を使って普通の「ヴィッツRS」より遅いクルマを買った、ということになっていたところだ。

整備記録簿が役に立つ

これは特殊な事例かも知れないが、安さのみを追い求めていると、状態がきちんと判断できなくなる可能性がある。一般的に中古車の状態を知るための指標は、年式や走行距離、修復歴となるのだが、同じ年式でも屋根付駐車場での保管と屋外保管では塗装や内装のヤレ具合に違いが出てくる。

また同じ走行距離でも、長距離走行がおもな個体と短距離ばかりで使っていたものでは、エンジンの内部状態が違ってくる。「オイル交換などのメンテナンスをきちんとおこなっていた長距離走行車と、ろくにメンテをしていない短距離走行車のどちらがいいのか?」と聞かれると、だったら長距離のほうがいいわ、となる。

こういったクルマの状態が分かるのが、整備記録簿だ。そのため状態のいいクルマを買いたいのなら、整備記録簿が残されている個体を探し、その記録簿の記載を確認してどういったメンテナンスをおこなってきたのか、そのクルマの履歴を調べたい。

ただ、市場に流通している中古車の多くは、整備記録簿がなかったりしがち。その場合にはたとえばエンジンのオイルフィラーキャップを開けてスラッジの付着具合を見るとか、試乗してトランスミッションの繋がり方、異音があるかどうかなどを確認して、状態を判断するしかない。そんなの難しくてできない、という場合には、保証付きのディーラー中古車を買うのがベターだろう。

さらに、修復歴があるかどうかも重要なポイントのひとつといえる。修復歴というのは、クルマの骨格に当たる部分にダメージを負った経歴があるかどうか、ということ。フレームやクロスメンバー、インサイドパネル、ピラー、ルーフ、室内のフロアパネル、トランクフロアパネルが修正および交換されていると、修復歴あり、となる。

しかしネジ止めされている部分、たとえばフェンダーやドア、バンパー、ボンネットなどが修理されていても、修復歴にはあてはまらない。たんに修理されたことがある、というだけだ。あくまで骨格部分がやられたことがあるかどうかが修復歴で、これは正直、中古車店の店頭でクルマを見ただけではわからない。

そのためJU(一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会)では、販売する中古車に修復歴がある場合はコンディションノートへの記載を義務づけていて、もしこの記載なしに修復歴車を販売した場合には、不具合を知ってから1年以内であれば問答無用で契約解除ができる、としている。

中古車の状態を判断するのは難しい!

えらく難しい話をしていると思われるかもしれない。しかし実際、中古車の状態を判断するのは難しいのだ。たとえば社用車などは、自分のクルマではないためか、まともにメンテナンスをしていないものが多かったりする。役所のクルマだって、公的な車両のくせに車検切れ運行なんていう、あってはならないことをしているケースがあるくらいだ。そういう履歴がわからないというのが中古車のもっとも不安なところ。中古車を買う場合には、安いのには理由があると思い、なにかあったら直すというつもりで予算を用意しておくのがベストだ。

そうでなければ、ディーラーが状態を確認して保証をつけて販売しているディーラー中古車を買う、というのがベターとなる。ただ、ここはダメだけどあとはいい、というクルマを安価で見つけたときのうれしさは、一度経験すると病みつきになってしまうもの。筆者自身も、2台目の「ヴィッツ RS TRDターボM」で現在も愉しんでいるわけだし。決して安い買い物ではないのだが、「一度や二度の失敗でめげずに、中古車ライフを愉しむ人がいてもいいんだけどなぁ……」というのが本音だ。

モバイルバージョンを終了