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四角いランチア「デルタ」がなぜまるくなった!? 発売当時フェラーリと同価格帯だった「ハイエナ ザガート」の3600万円は高い? 安い?

四角いランチア「デルタ」がなぜまるくなった!? 発売当時フェラーリと同価格帯だった「ハイエナ ザガート」の3600万円は高い? 安い?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

約3630万円は高いか安いか?

今回「Monterey」オークションに出品されたハイエナ・ザガートは総生産台数24台のうち18台目に製造された個体。ノースヨークシャー州ノースアラートンの指定代理店「ウォーカーズ・ガレージ」によって2001年に英国に輸入されるまで、未登録・未走行のままイタリアで保管されていた。

もともとは、赤のボディとコントラストをなすブラックの内装で仕上げられたこのハイエナは、ようやく2002年4月に最初のオーナーに納車。その後19年間、初代オーナーのもとにあった。この間の走行距離は3万kmにも満たなかったが、2006年にトリノで開催されたランチア100周年記念式典にも出品されたほか、「Auto Italia」、「Viva Lancia」などの出版物にも登場していた。

2021年後半、この個体は今回のオークション出品者が入手。すぐにイタリアのウディーネにある有名なランチア・デルタのスペシャリスト、「イタリア・モータースポーツ・プルッシーニ」社にフルレストアが依頼された。プルッシーニに課せられた任務は、このクルマを究極のハイエナへとアップグレードすることであり、そのタスクは12カ月をかけてみごと達成されることになる。

このとき実施された作業には、完全なストリップダウンの上にオリジナルペイントを総剥離。「グリジオ・アロイ」への再塗装が含まれている。また、限定生産されたデルタHFインテグラーレ「マルティーニ6」に使用されたものと同じターコイズブルーのアルカンターラによるフルトリムが施された。

いっぽう、メカニカルパートではエンジンのECUが再マッピングされ、スタンダード仕様のハイエナの250psから320psへとパワーアップ。また、グループA仕様のデルタHFインテグラーレのラリーカーがWRCの戦場で奏でていた豪快なサウンドを再現するために、特注のエキゾーストシステムも取りつけられ、サスペンションとブレーキもパフォーマンス向上のために改良された。

ランチア ハイエナ ザガート

レストア作業が完成したのちの走行距離はわずか100kmほどと短いものの、その間には完璧なパフォーマンスを発揮したと報告されている。

絶妙にレストアされたこのハイエナは、パワフルなスペックやセンスの良い仕立てに加え、現在に至るまでのオーナーは2名に過ぎないことが証明されている。

さらに特筆すべきは、この希少かつ重要なモデルが米国で販売される最初の例であるということである。この点についても確たる自信を得ていた現オーナーとRMサザビーズ北米本社は、30万ドル〜40万ドルという強気のエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

ところが、実際の競売では思ったほどにビッド(入札)が進まず、エスティメート下限にも届かない24万6400ドルで落札されるに終わった。これは日本円に換算すると約3630万円というけっこうな高価格にも映るが、言ってしまえば円安のせいというのが大きい。そのいっぽうで近年のハイエナ・ザガートの販売実績を検証してみると、今回の落札価格は決して安価に過ぎるものでもないことがわかる。

それゆえに、レストアとモディファイに高額の投資をしたとしても、それが販売価格として直接反映されるものでもないことを示す、一つの例のようにも感じられたのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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