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フォード「RS200」が約9000万円! わずか24台しか生産されなかった「エヴォリューション」の走行距離は500キロ未満!?

フォード「RS200」が約9000万円! わずか24台しか生産されなかった「エヴォリューション」の走行距離は500キロ未満!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

実戦投入されなかったエヴォリューションモデルの価値は?

RMサザビーズの「Monterey 2023」オークションに出品されたフォードRS200は、シャシーナンバー#0084。わずか24台しか製造されなかった「エヴォリューション」のうちの1台で、アメリカに新車として輸出された数少ないRS200の1台でもある。

1989年に最初の個人オーナーの手に渡る前に、複数のRS200をアメリカに輸入したディーラー主、ボブ・サザーランドが保有していたと考えられている。

このRS200エヴォリューションはその後28年間にもわたってサザーランドのもと保管され、その大半はネバダ州ラスヴェガスの「インペリアル・パレス・ホテル」館内に展開されていた、約800台の車両を展示する自動車博物館「オート・コレクションズ」で展示されていた。

2017年にミュージアムが閉鎖されたあと、この個体はテキサスを拠点とするコレクターに売却される。このコレクター氏は走行距離がまだ少なかったにもかかわらず、エンジンを元マウンチューンの技術者でフォードRS200の第一人者として知られるジェフ・ペイジ氏に託し、フルリビルドを行った。

フォードRS200

このときの作業は、メインおよびビッグエンドのベアリング、バルブスプリング、ピストンリングを新品に換装したほか、ビッグエンドのボルトの取り付け、新たにリビルトされたターボチャージャーと新品タイミングベルトの取り付けなど、約1万4385ドルをかけて行われた。同時に、トラブルの予防措置として冷却システム、ブレーキシステム、燃料システムも完全にオーバーホールされている。

2019年、このクルマの所有権は今回のオークション出品者でもある現オーナーに移り、現在にいたるまでごくわずかしか走行していない。

じつは、オリジナルのテラスピード社製デジタルスピードメーターは競技用のため、オドメーターが装備されていないのだが、新車として完成して以来の走行距離は500kmに満たないと考えられている。

とはいえ、シャシーナンバー#0084は現在の管理者によって几帳面にメンテナンスされており、2023年3月には約1万1000ドルをかけて、新品のフライホイールとティルトン社製カーボンツインプレートクラッチにアップグレードされている。このクラッチ・アップグレードによって、驚異的な出力とダイレクトなパワーデリバリーで有名なこのマシンのトラクションが、大幅に向上したと報告されている。

ボレアム工場から出荷されたときのフォード「ワークス」カラーと、コントラストをなすような赤いバケットシートで完璧に仕立てられ、希少なオリジナルのツールキットとスペアホイールも付属している。

そして「公道においても、あるいは近年急成長を遂げるヒストリックラリー・シーンのスペシャルステージにおいても、このグループB時代のアイコンは、本格的なコンペティションカーコレクションに加えられる注目すべき存在」という文言で、公式オークションカタログは締めくくられていた。

現オーナーとRMサザビーズ北米本社が協議の末に設定したエスティメート(推定落札価格)は、55万ドル~65万ドル。そして実際の競売では、エスティメートに到達する61万5500ドル、現在のレートの日本円に換算すれば約8990万円で無事落札されることになった。

エヴォリューションとはいえ実戦でのヒストリーの無い個体にこれだけの価格がつくのは、イギリス人エンスージアストたちが愛してやまない英国フォードのスポーツモデルの魅力がアメリカにも伝播していることにくわえて、フォードRS200というクルマの悲劇的なストーリーと圧倒的なカッコよさが重要な要素となっているのは、間違いのないところと考えるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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