サイレントスポーツカー
ダービーベントレーの6気筒3 1/2リッターエンジンはスムーズで洗練されており、当時としては十分な出力である約120馬力を発生していた。スタイリッシュで、速く、洗練され、エレガントなプロポーションを持ち、運転しやすいクルマであるがゆえに「サイレントスポーツカー」という名称で親しまれた。
また、ダービーモデルはクリックルウッドの先代モデルよりも洗練され、より俊敏でありながら、価格は400ポンドも安く、それまでのどのベントレーよりも幅広い顧客層に支持されたという。
3 1/2リッターベントレーは、生産中にシャシークロスメンバーをフロントに追加したり、ハーモニックスタビライザーバンパーを装着して乗り心地とハンドリングを向上させるなど、いくつかの開発を伴う改良が行われた。そして、オーナーは50ポンド追加することで、通常の3 1/2リッターに代わる大型エンジンを選択することができた。シリンダー・ボアを1/4インチ(6.35mm)拡大し、いくつかの外装部品を追加したこのモデルは4 1/4リッターと呼ばれ、1936年から39年までにこれまでの生産台数を上回る人気を獲得したのだった。
ベントレーにとっては不遇の時代にあった「ダービーベントレー」に再び光が当てられたこのようなイベントは、世界中のベントレーファンにとって歓迎されるものであったと想像できる。
AMWのミカタ
以前、ダービーベントレーの助手席に乗ってドライブしたことがある。W.Oモデルとは異なり静かで安定し、落ち着いたアイドリング音を奏でていたそのクルマも、一度走り始めると「もっと踏め!」と言わんばかりのベントレーらしい内に秘めた荒々しさを爆発させていた。W.O.ベントレーは「良いクルマ、速いクルマ、クラス最高のクルマを作る」という哲学を持っていたが、W.Oから手の離れたこのダービー時代のクルマにも、彼の哲学が生きていると知ってとても感動した記憶がある。ダービー時代のベントレーが再評価される日も近いのではないか。