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「スポコン」ってなに? 米国西海岸発祥の中古日本車のカスタムが逆輸入して進化したスタイルでした! その歴史を紐解きます

「スポコン」はアメリカで日本車をカスタムすることから始まった

1980年から90年代前半にアメリカの西海岸で「スポコン」というクルマのカスタムが流行していたことをご存知だろうか。「スポーツコンパクト」の略であり、比較的安価で高性能な日本の中古車をカスタムすることを指すのだが、その流行はやがて1990年代前半頃から日本に逆輸入され、日本でもブームに火がついて独自の進化を遂げた。改めて「スポコン」について振り返ってみよう。

アメリカ西海岸でブームになった

アメリカは移民の国、といわれている。残念ながら住んだことがないので実情はわからないのだが、現地の人に聞いたりした情報をまとめると、それぞれの出自の地域ごとにコミュニティ的なものがあって、それぞれに文化が違っているようだ。

どうしてこのことを知ったのかというと、1990年代前半、アメリカ西海岸で日本車が人気になっている、ということを小耳に挟んだからだ。当時筆者はクルマのドレスアップをメインとする雑誌を編集者として製作していたのだが、1980年代から西海岸ではスポーツコンパクトというカテゴリーが流行っている、という噂を聞いていた。で、それはなんぞ? ということで、情報を集めていたのだ。

なぜ日本車をカスタムすることが流行ったのか

そのころのアメリカでのクルマ文化は、白人系コミュニティではホットロッド、中米系チカーノのコミュニティではローライダーがメインとなっていたのだが、エイジアンといわれていたアジア系コミュニティで流行っていたのがスポーツコンパクトだった。ホンダ「CR-X」やVTECエンジンを搭載した「インテグラ」が、その火付け役だったといわれている。

もっといえば、当時のアメリカでは日本車の中古車が安かった、というのもポイントのひとつなのだろう。西海岸はいまでもそうだが、日本車が比較的売れている。しかしそれを新車で買うのはファミリーの奥さんやオフィスワーカーの女性が多く、男性はゴツいアメ車やピックアップに乗る、というケースが多かった。セクレタリーカー(直訳すれば「秘書のクルマ」)、とか言われていたくらいだったのだ。

そのため、日本車の中古車は安いけど程度がよく、値段の割には性能がいいということから、収入が少ない若者が買いやすく、買ったあとにチューニングしやすいということもあったはずだ。さらに、日本のパーツメーカーがいろいろなチューニングパーツをデリバリーしていたという背景もある。

日本に逆輸入されたアメリカ発祥のスポコン

そういった事情から、アメリカなのにFF車を中心にドレスアップというよりはチューニング、日本ではニトロと呼ばれるナイトロオキサイドを使ったパワーアップや、フルバケットシートの装着、車高のローダウン、リアワイパーレスやドアノブ、ナンバープレートポケットなどを埋めてしまうといったスムージングなどがおこなわれるようになっていった。これがスポーツコンパクトと呼ばれるジャンルの成り立ちである。

そのスポーツコンパクトが日本へと入ってきたのが、1990年代前半から中盤にかけてだった。といっても、そのままのスタイルが受け入れられたわけではなく、ネオン管やメッキパーツを多用する、ハイテックスタイルなども入り交じった、独特なスタイルが主流となっていった。なぜなら、すでに日本ではNAエンジンのメカチューンや過給器チューニングなどが、あたり前におこなわれていたからだ。

そうしたハードチューンとの違いを表すため、スポーツコンパクトは日本で独自の進化をしていく。そこには、ハイワッテージのアンプを中心としたオーディオカスタムなども含まれているのだが、より大きな違いとなっていたのが、カスタムするオーディオやホイールを、アメリカンブランドの製品で統一するというものだった。また、アメリカ仕様の純正部品、いわゆるUSDM(United States Domestic Market)的なパーツへの交換も、たんなるチューニングとは違う人気の手法となっていた。

USDMからJDM仕様へ。多様なチューニングに進化していった

逆にそのころのアメリカでは、アメリカで販売されている日本車に、日本仕様のパーツを装着するJDM(Japan Domestic Market)仕様が流行っていた。つまりは無い物ねだり、ということなのかもしれない。

このJDMは現在でも人気が高く、なんでも点検ステッカーとか車検ステッカー、保管場所標章なんかも日本のものだということで流通しているらしい。

そうやって認知度が高まってきたスポーツコンパクトなのだが、徐々に他人との違いを見せるためにホットロッドやローライダーの風味も混ざるようになってきた。チューニングをしたりシフトタイミングライト付きのタコメーターを装備するなどといったメニューに加えて、ボディ色をキャンディカラーとしたり、バイナルを入れたりするというのが一般化してきたのだ。

チューニングも機能の向上だけではなく、エンジンのヘッドカバーやサクションパイプのメッキ化、エンジンルームのライトアップなどをすることで、見た目も美しくという手法が一般化。いまではネジ式車高調整式サスペンションでのローダウンではなく、油圧や空気圧を使った車高調整式サスペンションをセットするというのもスポーツコンパクトの一手法として認知されている。

日本独自のスポコン文化

こうやって仕上げたクルマを西海岸の人に見せると、このやりかたはチカーノだね、とか、ホワイトだね、みたいにいわれるはず。つまり日本のスポーツコンパクトはすでに独自のものとなっているわけで、スポコンという日本でしか通用しない略称も、そうこれはスポーツコンパクトではなくスポコンなんだ、といえるものとなっている。海外から入ってきたものを魔改造するのは、日本人お得意、食べ物などではあたり前となっている手法。それと同じことがこのスポーツコンパクト、スポコンにも当てはまるのだ。

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