乗り心地の良さは乗用車に近づいた
テストドライブは緩やかな下り坂で、アクセルを軽く踏み込んで右折しつつコースインしていく。この時点で、ピックアップトラックらしさである曖昧さが見当たらないことに気づいた。
まず、2.4Lツインターボディーゼルユニットは低回転域から豊かなトルクをレスポンスよく発生させてくれるため、軽快さをともなってストレスなく前進させる。その際、タイヤの転がり抵抗はすこぶる小さく、タイヤの接地感が豊かになっている。さらにステアリングを切ってみれば、電動パワーステアリングの採用によって軽快かつダイレクト感があるという、まさに乗用車的なフィーリングにあふれていた。最小回転半径も6.2mと抑えられており、クイックに設定されたステアリングギヤ比も相まって、小回りも効くなといった印象があった。
コントロール性能を高めるために採用されたAYCにより、タイトコーナーではこれでもかとインをついていける。いや、それ以上にまだまだいけるぞ、とクルマに誘われているかのような感覚すら覚えたほど。
タイヤが浮いてしまいそうなモーグル地形では、まずはサスペンションを伸ばしてタイヤがしっかりと路面を捉えるという、ヘビーデューティモデルの基本がしっかりとデザインされており、トラクションコントロールといったシャシー制御は、あくまでもタイヤがグリップを失った際に介入するというスタンスを明確にしている。そこには、ドライバー主体たる三菱の設計思想がしっかりと織り込まれていることを感じた。
ちなみに、4WDシステムは、パジェロ譲りのスーパーセレクト4WD-IIを採用し、そこにターマックからマッドといった幅広いシーンを想定した7つのドライブモードを設定。今回は、4WDモードはフルタイム、ドライブモードはノーマルもしくはグラベルで、難なく走り切れてしまったことも付け加えておきたい。
乗り心地については、オフロードのみとはなったが、そこに不快感がないことが強く印象に残った。この手のモデルは、実用車ゆえにベッドに荷を積んだ状況を考えたセッティングが施されており、空荷状態ではリアが跳ねるような動きをしてしまい、結果としてキャビン、とくにリアシートの乗員へ突き上げ感を伝えてきてしまうもの。
しかし、新型にはそうした嫌味な動きが見当たらなかった。もちろん、オフロードで発生する大きな入力に対しては相応の揺れを伝えてくる。だが、少なくとも日常シーンでは突き上げを感じさせることはないと推測できたし、むしろ、高速走行ではフラットライド感が心地よさを作り上げてくれそうな印象すら覚えた。
そうそう、ディーゼルユニットはトルクフルなだけではなく、全域においてパワフルさがあり、大排気量エンジンのような印象を受けるが、同時に扱いやすさも備えており、とにかく好印象だった。ヒルクライム(上り坂)では、それほどエンジン回転を上げぬままに難なく上り切ってしまったし、オフロードでじんわりと走らねばならないシーンでも、自在に車速をコントロールすることができたこともお伝えしておこう。
と、褒めちぎった新型トライトンのプロトタイプだが、その乗り味からはピックアップトラックの悩みだった曖昧さはかなり抑え込まれており、乗用車的とは言い過ぎだが、実用車と乗用車とのバランスがいい塩梅にとられていた。それは、オフローダーだけではなく、誰にも勧められるものと言い換えることもできる。自身は、車庫証明が取れないこともあって新型トライトンを所有することはできないが、もしその難題をクリアできるならば欲しいと思わせたほどの魅力に満ちていた。