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三菱「トライトン」に乗った! 2024年初頭に国内投入される話題のピックアップの実力を試してきました

ブランドマスクの「ダイナミックシールド」を、立体的なグリルなどでピックアップに相応しいデザインに。3連のL字型LEDのデイタイムライトも特徴的

待ち望んでいた日本導入に歓喜

三菱自動車がタイで生産するグローバルモデル、ピックアップトラックの「トライトン」がモデルチェンジし、2024年初頭には国内へ導入することも発表されました。日本でも待ち望んでいる人が多いというピックアップトラックのプロトタイプを、ひと足先にオフロードで試乗してきました。

フレームから一新し最新先進装備まで装備

2023年の7月26日、三菱自動車は、同社の主力ラインナップであるピックアップトラック「トライトン」の次期型モデルを発表した。このモデル、国内では、1978年に「L200」という車名でデビューし、その後、「ストラーダ」、トライトンと名称を変更しながら、その生産をタイへと移管。いつしか国内での販売を中止してしまったが、この次期型モデルを再び国内へと導入することになったのだ。

現在、この手のピックアップトラックは、全長5mをオーバーしていることもあり、国内では取り回しや駐車場探しでの苦難が伴う。しかし、北米モデルでは並行輸入してまで乗りたいというオーナーは少なくない。また、タイでトライトンのライバルであるトヨタ「ハイラックス」が国内導入され想定以上にヒットするなど、意外に待ち望んでいる人は多いようだ。

ちなみに、1990年代に多く目にした1トン積みピックアップトラックでは、その荷台にアウトドアアイテム、MTBやオフロードバイクを載せて走るといった使い倒すライフスタイルのほか、空荷のまま走るファッション的な愉しみ方が見られた。しかし、当時は幼少だった方々、つまりそういったシーンを目にしたことがない世代にとっては、ピックアップトラックそのものが新鮮であり、そのライフスタイルにはまさに流行が1周まわったかのような新鮮さがあるのだという。

そういった国内の迎え入れ状況が整ったこともあり、新型トライトンは満を持して2024年初頭に国内へ導入されることとなった。新型はピックアップトラックの要となるラダーフレーム構造からして一新され、ハンドリングから乗り心地、さらには快適性を謳うアイテムから先進安全機能まで、最新を揃えている。そこからは、もはやピックアップトラックらしさが消え去っているという話も聞こえてくるほどだ。今回は、そのプロトタイプに、北海道にある三菱のテストコース(オフロード)で試乗の機会を得たので、お伝えしていこう。

最近の三菱のモデルに倣って、この新型トライトンもダイナミックシールドコンセプトを用いたフェイスデザインが印象的で、同時にスタイリッシュであることも感じ取れる。

それもそのはず、FRレイアウトベースのモデルらしさを追求し、先代と比較してフロントタイヤを前へと出し、空力を追求した流麗なプロポーションをテールまでデザインしており、まるでクーペかのような印象を与えているからにほかならない。このあたりは、クーペテイストを作り込んだ同社の「エクリプス クロス」に通じるところがある。随分と大柄だなという印象を抱くが、スペックをチェックするとそれもそのはず、全長は5360mm、全幅は1930mmと、国内向けサイズではないことを改めて感じる。

ただ、乗りこんでみると、適度なタイト感に包まれた居心地のよさを感じさせつつも、ウインドウがそれほど広くないのに見切りがいいと感じる不思議な印象を覚える。それもそのはず、フォルムを追求しただけではなく、ピックアップトラックに求められる視界のよさを作り込んでいたからにほかならない。

例えば、エンジンフードは両端をえぐるような造形としているが、これもオフロードではフロントタイヤ前はもちろんその先まで見渡すのにじつに有効だ。そのほか、周囲の様子をリアルタイムに映し出すマルチアラウンドモニターなど、細かな「気配り」があちこちに見られる。

乗り心地の良さは乗用車に近づいた

テストドライブは緩やかな下り坂で、アクセルを軽く踏み込んで右折しつつコースインしていく。この時点で、ピックアップトラックらしさである曖昧さが見当たらないことに気づいた。

まず、2.4Lツインターボディーゼルユニットは低回転域から豊かなトルクをレスポンスよく発生させてくれるため、軽快さをともなってストレスなく前進させる。その際、タイヤの転がり抵抗はすこぶる小さく、タイヤの接地感が豊かになっている。さらにステアリングを切ってみれば、電動パワーステアリングの採用によって軽快かつダイレクト感があるという、まさに乗用車的なフィーリングにあふれていた。最小回転半径も6.2mと抑えられており、クイックに設定されたステアリングギヤ比も相まって、小回りも効くなといった印象があった。

コントロール性能を高めるために採用されたAYCにより、タイトコーナーではこれでもかとインをついていける。いや、それ以上にまだまだいけるぞ、とクルマに誘われているかのような感覚すら覚えたほど。

タイヤが浮いてしまいそうなモーグル地形では、まずはサスペンションを伸ばしてタイヤがしっかりと路面を捉えるという、ヘビーデューティモデルの基本がしっかりとデザインされており、トラクションコントロールといったシャシー制御は、あくまでもタイヤがグリップを失った際に介入するというスタンスを明確にしている。そこには、ドライバー主体たる三菱の設計思想がしっかりと織り込まれていることを感じた。

ちなみに、4WDシステムは、パジェロ譲りのスーパーセレクト4WD-IIを採用し、そこにターマックからマッドといった幅広いシーンを想定した7つのドライブモードを設定。今回は、4WDモードはフルタイム、ドライブモードはノーマルもしくはグラベルで、難なく走り切れてしまったことも付け加えておきたい。

乗り心地については、オフロードのみとはなったが、そこに不快感がないことが強く印象に残った。この手のモデルは、実用車ゆえにベッドに荷を積んだ状況を考えたセッティングが施されており、空荷状態ではリアが跳ねるような動きをしてしまい、結果としてキャビン、とくにリアシートの乗員へ突き上げ感を伝えてきてしまうもの。

しかし、新型にはそうした嫌味な動きが見当たらなかった。もちろん、オフロードで発生する大きな入力に対しては相応の揺れを伝えてくる。だが、少なくとも日常シーンでは突き上げを感じさせることはないと推測できたし、むしろ、高速走行ではフラットライド感が心地よさを作り上げてくれそうな印象すら覚えた。

そうそう、ディーゼルユニットはトルクフルなだけではなく、全域においてパワフルさがあり、大排気量エンジンのような印象を受けるが、同時に扱いやすさも備えており、とにかく好印象だった。ヒルクライム(上り坂)では、それほどエンジン回転を上げぬままに難なく上り切ってしまったし、オフロードでじんわりと走らねばならないシーンでも、自在に車速をコントロールすることができたこともお伝えしておこう。

と、褒めちぎった新型トライトンのプロトタイプだが、その乗り味からはピックアップトラックの悩みだった曖昧さはかなり抑え込まれており、乗用車的とは言い過ぎだが、実用車と乗用車とのバランスがいい塩梅にとられていた。それは、オフローダーだけではなく、誰にも勧められるものと言い換えることもできる。自身は、車庫証明が取れないこともあって新型トライトンを所有することはできないが、もしその難題をクリアできるならば欲しいと思わせたほどの魅力に満ちていた。

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