ベントレーのインクルージョンへの取り組み
ベントレーモーターズは世界で最もダイバーシティに富むラグジュアリーカーメーカーとなるための次なるステップとして、「ビロンギング ベンテイガ」(Belonging Bentayga)を公開した。イギリスの建築画家であり、大英勲章第5位(MBE)を受勲しているスティーブン・ウィルシャー氏によって描かれた、このアートカーに込められたメッセージとは何なのか見てゆくことにしよう。
ビロンギングベンテイガを制作した意図とは?
「ダイバーシティ&インクルージョン」はベントレーが特に力を入れているテーマである。このテーマで2019年には「Unifying Spur」を、そして今年はLGBTQ+をサポートするマンチェスタープライドの祭典においてGTCのアートカーを制作した。
ダイバーシティをテーマにしたアートカープロジェクトの第3弾にあたるわけだが、今回はイギリスの建築画家であり、大英勲章第5位(MBE)を受勲しているスティーブン・ウィルシャー氏がアルパイングリーンのベンテイガのボディの左右を別々の大陸に見立て、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマ、ミラノ、ベネチア、東京、香港をはじめとする世界各地の全29カ所の景観や著名な建造物をハンドペイントで描いた。
スティーブン・ウィルシャー氏を選んだベントレーモーターズのチーフコミュニケーションオフィサーのウェイン・ブルースは
「ベントレーの従業員の国籍は52カ国にわたり、ダイバーシティに富んだチームがラグジュアリーカーを手作業で製作し、そのクルマが世界主要都市のリテーラーを通し、67カ国で販売されていることは当社の大きな誇りです。ビロンギング ベンテイガに描かれた唯一無二のアートが表現しているのは、どこにいようと、あなたには居場所があるというメッセージです。当社には、誰もが最高の能力を発揮できるよう支援するという企業文化があり、スティーブンはベストを尽くし、決して立ち止まらないという信念を持っています。両者の思いは重なります」
とコメントしている。これは、ベントレーの従業員に対する姿勢を公にしたということだろうか。
特殊能力をもつ作家?
スティーブン・ウィルシャー氏は西インド諸島出身の両親のもと、ロンドンで生まれた。幼少期は無口な子であり、3歳のときに自閉症と診断されたが、それからまもなく、彼の家族と教師はスティーブンが言葉ではなく、絵でコミュニケーションをとっていることに気付いた。彼が描く対象は最初は動物、次にバスへと変化し、最終的には建物を描くようになったのだが、彼が細部まで正確に描く都市景観やウィットを感じさせる表現様式は、世界中で称賛されている。
ベントレーモーターズは経験や視点の多様性が極めて重要であることを認識しており、クルー本社のドリームファクトリーにおけるダイバーシティ&インクルージョンの強化に向けた戦略を2021年に打ち出している。ウィルシャー氏は、一度見た風景を記憶し、後から正確に描画するという特殊能力を持つサヴァン症候群の画家として知られている。
そのような個性を持ちながら活躍するウィルシャー氏の姿はベントレーを通じて、多くの悩みを抱える人々を勇気づけるものになるのではないだろうか。
AMWのミカタ
ここに掲載されている多くの写真をぜひじっくりと見ていただきたい。そこに描かれている何百人という人々は老若男女みんな幸せそうに笑っている。ウィルシャー氏は「存在すること、つながることをテーマにずっと作品を制作してきた」と語る。どんな人にも存在価値があり、社会のなかで幸せに生きてほしいという願いが彼自身の笑顔からもうかがえる。ベントレーが戦略として目指しているダイバーシティ&インクルージョンの世界を見事に表現しているのではなかろうか。