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シトロエン「CX」に乗って21年で14.8万キロ! ハイドロ1台で何でもこなすオーナーは物理の先生でした

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TEXT: 南陽一浩(NANYO Kazuhiro)  PHOTO: 南陽一浩

ハイドロのギミックと極上のシートからは逃れられない

独特のメーターパネルまわりのスイッチを鮮やかに操作して見せながら、永野さんはインテリアで初期型よりもシリーズ2だからこその、お気に入りディテールを教えてくれた。

「車高調整する機構は、ハイドロのシトロエンでお約束のものですが、このCXのシリーズ2だけはレバーではなく、シフトコンソールより前方のダッシュボード根元にある、スライドスイッチになっているんですよ。あとドアノブが、ドアハンドルの裏に完全に見えないように隠されているのも初期型とはデザインの異なるところ。そのまま握るだけで指が当たるはずなんですけど、初めて乗るとたいていの人が降りられないですよね(笑)」

降りられない、もうひとつの理由はアンコの柔らかい快適無比のシート。このシートであの乗り心地を味わって、気持ちいいと感じてしまったら、それはもう蟻地獄の始まりというわけだ。

そんなCXの魅力に憑りつかれ、永野さんは実車以外のアイテムも多々収集している。整備マニュアル各種やカタログといった紙アイテムだけでなく、圧巻はリアボードの上、ワイヤースケルトンモデルだ。

「すべてスクラッチで作ってくれるんです。ヘッドライトなんかは本物のガラスを溶かして成型されていますよ。制作に2年待ちましたけど、作ってもらうだけの価値があると思います」

これがノレブの1/18スケール、しかも実車と同色ボディカラーのミニチュアとともに並べられているのだから、観る者の想像力をかき立ててくれる。実際、水や空気をひとつの回路の中に閉じ込めることで、作用や反発を利して懸架装置として用いるのが、ハイドロプニューマティックの原理でもある。ついつい、スピリット・オブ・ワンダーをかき立てる部分を、分かりやすく図解してくれるところが物理の先生ならではの、サービス精神なのかもしれない。

CX 25 GTiに21年以上乗り続けるナイスガイは、人生至るところにハイドロあり、仕事でもプライベートでも物理の原理を実践し続ける塾講師だった。

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