人々を笑顔にさせるクルマ
ミニバン系のオラオラ顔や、ツリ目系、あるいは最近のEVなどに見られるグリルレスのポーカーフェイス系etc……。ひと口にクルマのフロントマスクと言っても世の中のクルマのフロントデザインはいろいろで、それぞれの表情や個性がある。もう少し擬人化して「ハッピーフェイス」や「スマイルフェイス」などと言われる種類の顔つきのクルマもそんなグループのひとつだ。今回は、見るだけで思わず笑みがこぼれるハッピーフェイスなクルマを8台紹介しよう。
フォルクスワーゲン パサート
メーカー自身が名乗った例ではVWの3代目「パサート」の後期型(B4)が、グリルレスだった前期型からグリル付きにフェイスリフトされ、表情が付いたせいかこのデザインを「ハッピーフェイス」と呼び、以降、1990年代後半のVW車へも展開した例があった。
オースチン ヒーレースプライト Mk.I
もっと古い例では1958年、イギリスで登場した小型オープン2シーターのスポーツカー、オースチン「ヒーレースプライト Mk.I」は、日本のマニアの間で「カニ目」と呼ばれた例(本国ではフロッグ・アイ=蛙の目と呼ばれた)もあった。
スバル プレオ・ニコット
近年……といっても2000年12月のことだが、スバルより発売されたのが、軽自動車の「プレオ・ニコット」。「にこっとした微笑みをイメージしてネーミング」とはスバルの資料にある説明だが、要は当時のプレオの顔を変えたモデルだった。といっても丸型ヘッドライト、グリル一体ボンネット、バンパーなどはこのニコットのために起こされた専用パーツで、ベースのプレオに比べ、グッと表情豊かなものに。往年の「スバル360」のイメージとも重なるデザインでもあった。
ダイハツ オプティ・クラシック
ダイハツ「ミラ」の上級派生車種として1992年に登場した「オプティ」。この初代オプティに1996年になり追加されたのが「オプティ・クラシック」。メッキのグリルを装着したいわゆるレトロ調の企画商品ながら、ありがちな台形グリルでミニ風にするのではなく、口角の上がった、まさしく人の口元のようなユニークなグリル形状にメッキのベゼルで縁取られた専用の丸型(わずかにオーバルだった)ヘッドライトを採用。さらにメッキのバンパーを組み合わせ、まさに笑顔に仕上げられていたのが特徴だ。プロテインレザーのシートなど、内装にもこだわりが。一方で4ドアハードトップを採用した2代目でも、デザインを改めたクラシックが設定された。
トヨタ スプリンターカリブ・ロッソ
1998年に「スプリンターカリブ」のマイナーチェンジと同時に設定されたのが、この新グレードの「ロッソ」だった。たしか欧州市場にも投入されていたはずだ。丸型2灯ヘッドライトやメッシュタイプの専用グリルにより、他のグレードと明快に異なるデザインのハイセンスでおしゃれな外観(当時のニュースリリースより)としたというのがメーカーの説明。ハイセンスというより、メキシコサンショウウオ(ウーパールーパー)的なユーモラスな表情に見えたが、いずれにしても癒し系のハッピースマイルなルックスだ。
マツダ オートザム・キャロル
マツダが展開していた「オートザム」専売モデルとして1989年に登場させたのがこの「キャロル」。キャロル名義としては往年(1962年~1970年)の初代以来19年ぶりに復活したメイクでもあった。同じオートザムの「レビュー」の軽自動車版といった趣だったが、今回の記事のテーマに則していえば、丸型ヘッドライトや笑顔の口元、そして丸っこい全体のスタイリングはいかにもハッピーフェイスなクルマだったと言っていいはず。キャンバストップや、ボーイッシュなターボも設定があったりと、楽しげなラインナップを揃えていた。
ルノー トゥインゴ
1995年8月、当時ヤナセが設立したフランスモーターズにより輸入が開始されたのが、初代ルノー「トゥインゴ」。本国フランスでの発売は1993年春のことだった。ルノーの乗用車ではもっともコンパクトなクルマで、見てのとおりのモノスペースのフォルムが特徴(われわれ日本人の目には1985年にホンダから発売された初代「トゥデイ」とラップしたが……)で、内装もカラフルなシート表皮など、楽しげなクルマだった。それといつも微笑んだ表情に見せるヘッドライト形状など、この車を眺めて眉間にシワを寄せる人はおりますまい……そんなユニークな存在感のクルマだった。
マツダ MX-5ミアータ
それともう1台、取り上げておきたいのが初代マツダ「MX-5ミアータ」。もちろん1989年に登場したユーノス「ロードスター」(NA型)のことだが、今回あえて北米仕様のミアータを取り上げたのは、州にもよるがフロントのライセンスプレートを付けないことが許され、ハッピーフェイスの笑った口元がカタログ写真でもクッキリとわかるからという理由から。その後の5角形グリルよりも、やはり柔らかな輪郭のこのカタチのほうが馴染む……というのは、今だから言える感想。クルマだけでなく乗っているオーナー(と髪の毛を気にしない女性)も笑顔にさせるという意味では、まさにハッピーフェイスなクルマといっていいだろう。