未来的デザインと極上の乗り心地を備えたビッグ・シトロエン
シトロエン乗りって、やはり変わった人が多いのか? そんな都市伝説を検証するために2023年9月17日(日)、飛騨・高山で行われた「シトロエニスト ランデブー オーナーズ フェスティバル2023」で、オーナーたちの生態に迫ってみる迫真ルポ。第4回は、埼玉県は熊谷からやって来たという、最終型近くの1999年式、かくしゃくとした「XM」のベテラン、岡村利男さんにスポットを当ててみよう。
家族をいたわる乗り心地を求めてシトロエンに
XMといえば失礼ながら、昔々から語られてきた「イタフラはよく壊れる」という風評の代表格のような、乗っているだけでツワモノとされるクルマ。そもそもストップ&ゴーが少なく、けっこうブン回して走れる道路事情で、湿度も少ない、そんなフランス本国に近い条件で乗っていれば、そんなことは決してないのだが。ただ日本の道路事情に対してクルマの方がアンダーキャパ気味、そんな現象は、ややもするとあった。
「このXMに乗って、9年経ちました。たしかにXMはずいぶん少なくなったかもしれません。じつは“C6”乗りに元XM乗り率はかなり高いんですよね」
いきなり真実味あるコメントを、グッサリ刺すでも不平をいう体でもなく、岡村さんは淡々と語り出した。
「XMは手強いという話は、買った後から聞きました。それまでマツダ“MPV”のローダウン仕様に乗っていたのですが、さすがに乗り心地が悪く、家族をいたわる方向で乗り換えを探したんです。最初に欲しかったのは“BX”。でも10年前ぐらいで、モノがなかったんですよね~」
それでXMに?
「いや、もう一段階ありまして。そこで新車を考えて、シトロエン・ディーラーに行って“DS 5”に試乗したんです。でも求めている乗り心地と違う気がして。“エグザンティア”も考えたんですけど、デザイン的にあまり惹かれなかった。そうしたら埼玉の有名店で、車検込み60万円で、このXMがあったんです」
「洗礼」を受け続けても諦めず乗り続けるのは何故?
うわ! それは香ばしいけど、よく思い切られましたね。
「そこからまさしく洗礼ですよ。帰り道からすでにオーバーヒート気味で、LHM(ハイドラクティブの作動油)って何? という状態から、インターネットで調べまくって勉強。不思議とイヤにはならず、カッコいいから壊れるのは仕方ないけど維持しようと思いましたね。今の主治医は杉並にお店、下妻にガレージがあるモダンサプライさん。パーツも出してくれるので助かっています」
今回の短いインタビューの間だけでも、手を入れた箇所は数知れず。羅列するこちらが申し訳なくなってくるほどだ。
「ATのオーバーホールに始まって、V6ですから重くて負荷もあるんでしょうね、サスペンションのストラットは右が抜けました。熱量もあるから峠は登り道が怖かったですね。エンジンもオイル漏れが酷くて、ガスケットはヘッド側も腰下側も替えました。細かいところでは、ハイマウントストップランプがリアハッチを閉めた瞬間に落ちて来たこともあります。ステーをかましてテープで留めたり工夫しないとまた落ちてきますね」
では聞きますが、なぜそうまでして、諦めずに乗り続けているのですか?
「う~ん、ベルトーネのデザインで、カタチがツボにハマっているのに加えて、乗り味も好きなんでしょうね。当初、乗りたいと思っていたBXの評価が感じられるというか、延長上にある乗り心地だと思うんですよ。C6は現代的でフラットで、XMはまだまだストロークする足なんです。CX以来のストローク量の多いのを引きずっていて。DSは相当に柔らかいですから」
山登りに出かけて駐車場で「遭難」しかけたことも
ちなみに岡村さん、お仕事は大工までこなせる一級建築士で、もしかして自前でのトラブルシューティングもかなり上達したとか?
「そんなことないですよ。修理メンテのお店はあえて固定しないで、色々なところにもっていくようにしています。労わって乗ることも覚えましたね。それでも、山登りを楽しむのでかなり距離乗りますけど。先週も新穂高の裏銀座ルートにいったばかりです。一度、蔵王山の登山口近くの駐車場でシフトのカプラーが抜けて、動けなくなったことがありました。オイルや冷却水、保安部品やLHMも積んでいますけど、タイラップを携帯していてよかったです。携帯電話でメカニックと連絡とりながら、応急処置してなんとか帰れました」
とまぁ、山ではなくクルマで遭難未遂の経験すら、淡々と岡村さんは話す。個人的なこだわりは、あえて初期型に戻したホイールとリアウイングだとか。
「じつは今、家内は2代目の“C4”に乗っているんですよ。もう1台、1974年式の“アミ8ブレーク”も手に入れて、フレンチブルーミーティングにも毎年、顔を出しているんですが、そっちで行こうと思っています」
今のところ、シトロエン以外の選択肢はないとシンプルに語る岡村さん。XMのオーナーは、酸いも甘いも乗り越え、XMに惚れ込み続ける漢(おとこ)だった。