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アバルト「500e」に現地試乗! 電動サソリは「速い」「楽しい」「気持ちいい」「サイズもいい」クルマでした【週刊チンクエチェントVol.21】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: Stellantis N.V.

コーナーからコーナーの点から点がはっきりと速い

シャシーの方はどうか。ベースのフィアット500eの段階で、バッテリーは座席の下のフロアに敷き詰めてるから前後左右の重量バランスがいいうえに重心も低く、さらにはホイールベースが内燃エンジンの695と較べて24mm長くなってるけどトレッドは60mmも広がっていて、つまりはホイールベース・トレッド比がより曲がる方向の数値を持っていた。エンジニアに訊ねたところによれば、「もともと優れた素養を持ってたから、手を入れたのはスプリングのレートとダンパーの減衰を引き締める方向に持っていったことくらい」だったそうだ。ただ、スピードレンジが高くなってる分、タイヤはブリヂストンと共同開発した専用品となって、ブレーキはリアにもディスクが与えられている。

この日の試乗は先に695コンペティツィオーネでコースを3周走り、続いて500eで3周走る、というかたちで行われた。695に乗って痛感したのは、このクルマは今もって小型爆弾としての第一級であり、どこにスッ飛んでいくか判らないようなスリリングなフィール込みで、思い切りエキサイティングなクルマだな、ということだった。最高に楽しいし、最高に気持ちいい。

けれどアバルト初の電動ホットハッチも、まったく負けてはいなかった。まず発進加速が速い。コーナーから飛び出していくときの立ち上がり加速はさらに速い。695がエンジン回転の上昇とターボの過給を待ってる間に、スパーッと加速していく。コーナーからコーナーの点から点がはっきりと速い。しかもその「点」、つまりコーナーでも速い。ノーズは素早く滑らかに鋭く曲がりたい方向に正確に向かっていくし、コーナーをトレースしているときにもずっと安定して速く、出口でのアンダーステアも驚くほど少ない。速さで695に優ってるのは間違いない。しかも695コンペティツィーネほどサスペンションのセットアップがハードじゃないから、路面の荒れた箇所を走っても突き上げはそう強力でもなく、乗り心地は段違いといえるくらいに良好だ。充分以上に刺激的だし、充分以上に楽しく、そして気持ちいい。

BEVにしては珍しい走行音やアイドリング音が楽しめる

加えてアバルト500eは、BEVにしては珍しく、はっきりとした走行音やアイドリング音を持っている。6000時間もの時間と手間をかけて作り込んだサウンドジェネレーターが発するサウンドが、室内のスピーカーからじゃなく車体後方下面に備わるウーファーから、まるで内燃エンジンのクルマかと思えるように後方から追いかけてくる感じで聞こえてくる。それもアバルト・ユーザーが愛してやまない、レコードモンツァ・エキゾーストそのもののサウンドが。これ、作り物だとはわかっていても、気づくとそのサウンドを快く感じていて、あるのとないのでは大違いだな、なんて思わされたものだ。

たしかに695のヤンチャなスモールボムのようなテイストは薄いけど、BEVらしいクールで滑らかで洗練された印象が強いのだけど、そんなふうに表現方法が違っているだけで、楽しさと気持ちよさの総量は全く引けをとってない。いや、もしかしたら総合得点では優ってるかもしれない。まるっきり新世代のアバルト、なかなかやるヤツなのだ。

繰り返しになるけど、アバルト500eの国内発表は10月11日の午前11時から、オンラインで行われる。まずはそれを見て、そしてアバルトのショールームに試乗車が配備される頃になったら、ただ試乗してみるだけでもいいから乗りに行ってみて欲しい。きっと何か感じ入るものがあると思うから。

■アバルト公式サイト(ライヴ配信視聴リンク

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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