オデッセイの再デビューを前に、今はなきホンダのミニバンを振り返る
ホンダのかつての救世主たる「オデッセイ」が、この2023年冬に再デビューする。「Re:ODYSSEY」というキャッチコピーは、まさに生まれ変わったということを示すもの。そこでここでは、ホンダが初代オデッセイをつくった背景や、そのころのホンダが生産していたミニバン系統のクルマを見ていきたいと思う。
オデッセイ
1990年代前半のホンダは、セダンやクーペのラインナップは豊富だったが、利益率の高いミニバンやRVのラインナップが貧弱で、業績的にもつらいものがあった。
そこで開発されたのが初代オデッセイ、RA1型だった。「アコード」のプラットフォームを利用し、アコードと同じ生産ラインで流せる限界のサイズとして設計されたこのモデルは、スライドドアこそ装備されていないが、それによってボディ剛性はセダン並といっていいレベルを保っていたし、足まわりもアコード譲りだったために他社のミニバンと比べるとはるかに走りのレベルが高かった。
その点がセダンに乗っていたユーザーにも評価され、販売台数はヒットモデルといっていいレベルをクリア。ホンダの業績を建て直すきっかけともなった。1996年に発売された初代「ステップワゴン」と合わせて、いまのホンダのベースをつくったモデルといえる。
その後オデッセイは1999年に2代目が、2003年には3代目、2008年には4代目がデビューするが、後席ドアはいずれも前ヒンジタイプでスライドドアではない。2013年デビューの5代目、RC1型になってはじめてスライドドアが採用されたが、これは低床フロアの徹底化とともに室内高を高くするためのルーフの持ち上げによって、通常ドアでは乗降性に難がでる、ということから採用されたもの。オデッセイの特長であった低ルーフという部分は、この5代目ではかなり薄まってしまっている。
ストリーム
2000年にデビューした、ワゴンとミニバンの中間のようなボディシルエットを持つ3列シート車が「ストリーム」だ。ボディサイズが5ナンバー枠であることから、オデッセイでは駐車場に停められないというユーザーに人気となったクルマだった。
初代のRN1型は2.0Lと1.7Lエンジンを選ぶことができ、2006年デビューの2代目、RN6型は2.0Lと1.8Lをラインナップしていた。この2代目ストリームはどちらの排気量も相当な距離を乗っている。加速の気持ちよさという点ではもちろん2.0Lに軍配が上がるが、頭が軽いことによる回頭性の良さや全体のバランスの良さは1.8Lのほうが上だった。ただこの2代目ストリームは2014年に生産が終了している。後継モデルといっていい「ジェイド」は車幅が1775mmと拡大してしまっているため、ホンダ車の5ナンバーサイズで多人数が乗れる、というクルマは、背が高めの「フリード」となる。
エリシオン
「ラグレイド」の後継車種、ホンダの最上級ミニバンとして2004年にデビューしたのが「エリシオン」だ。初代のRR1型は直列4気筒の2.4Lエンジンと、V型6気筒の3.0Lエンジンを搭載。3.0Lエンジンは低負荷時に横置きV型の後ろ側バンク3気筒を休止させる、気筒休止機構を採用することで、環境性能を高めている。モデル後期になって登場したプレステージには、V6の3.5Lエンジンを搭載。全長5m弱、車重が2tほどという大柄で重いボディを、力強く走らせることができた。しかしその大きさが仇となって、日本国内での販売数は低迷していた。2代目のRC1型は2016年にデビュー。これは5代目オデッセイの姉妹車としてつくられたものとなっている。