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マクラーレン「P1」が約3億! 新車価格の3倍近くのプレミアがつく正真正銘のコレクターズアイテムになりました

201万2500ドル(邦貨換算約2億9180万円)で落札されたマクラーレン「P1」(C)Courtesy of RM Sotheby's

128台が新車でデリバリーされたアメリカ市場向けの1台

2023年8月17日~19日、RMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてマクラーレン「P1」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。

現代の目で見ても一切古さを感じさせないP1

それは長いようで短く感じる10年間だったと思うと、今さらながらに驚きを隠し得ない。スーパーカーのレベルを超えた、いわゆるハイパーカーの世界がここまで大きく進化するとは、はたして10年前に誰が予想しただろうか。その進化の原動力となったのはもちろん電動化である。

ハイパーカーの世界においては、効率を向上させるだけではなく、運動性能の限界も同時にこれまでのレベルから一気に押し上げようとしている。時をほぼ同じくして誕生した「ラ フェラーリ」、ポルシェ「918スパイダー」、そしてマクラーレン「P1」。

それぞれが内燃機関とエレクトリック・モーターの組み合わせから、最大のパフォーマンスを引き出す最善の方法について、微妙に異なる考え方を持っていた。2023年夏、その正式発表からちょうど10年を迎えたマクラーレンP1の姿は、改めてその事実を思い出させるには十分すぎるほどのインパクトを持つものだった。

複数の肉食動物からインスピレーションを得たとされるP1のエクステリアデザインは、現代の目で見ても一切古さを感じさせるものではない。「すべてのデザインは機能に従う」とは、マクラーレンが最も基本とするデザイン哲学だが、さらにその機能を可能なかぎり小さく包み込む「シュリンクド・ラップ」の手法が採り入れられていることで、P1はそれを見た第一印象から優秀なエアロダイナミクスを想像させるハイパーカーに仕上がっている。

その印象は実際にコックピットに収まっても変わることはない。あたかも自分がボディの一部となったような、スムーズな空気の流れに貢献しているかのような満足感を、P1というモデルからは感じ取ることができるのだ。

マクラーレンにとってP1は、会社の新しい分岐点となる瞬間を飾る一台だった。彼らはそのルーツに忠実に、軽量なカーボン製のモノコックタブを開発し、外部のボディワークと主要なキャビン構造もカーボンファイバーによる見事な軽量アッセンブリーで作られている。

ブレーキは日本とコラボしたカーボンセラミック

日本の曙ブレーキ工業と共同開発した独自のカーボンセラミックディスクブレーキは、放熱効果を高めるためにケイ素が注入されており、これはMC4-12Cのそれより50%も多くエネルギーを吸収することができた。ブレーキ・ステアの採用もF1の歴史に詳しい人には見逃せないポイントだろう。

ミッドに搭載されたエンジンは3.8LのV型8気筒ツインターボ。ドライサンプの潤滑方式や低位置のフラットプレーン・クランクシャフトが特徴だ。最高出力は717ps、注目のエレクトリック・モーターは高い燃費効率を得るためではなく、ギアシフト時やターボが十分に過給する以前の低回転域など、従来のエンジンがピークパフォーマンスを発揮できない時のギャップを補完し、ドライバーに常に最大限のパワーを供給する。エレクトリック・モーター自身の最高出力は176ps。システム全体では最高出力は893psという計算になる。

2013年3月にP1を発表したマクラーレンだが、その375台の生産枠はわずか8カ月ですべてが埋まった。今回出品されたプロダクトナンバー「170」のP1は、128台が新車でデリバリーされたアメリカ市場向けの1台で、2014年10月にカリフォルニア州のニューポートビーチのマクラーレン・ディーラーからカスタマーの手に新車で納車された記録が残っている。

スタンダードなP1の装備に加え、MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)にさまざまなスペシャル・オーダーがリクエストされ、その金額は6万ドル近いものになっていたことが、車両とともにあるオプション装備リストから証明されている。

新車からの走行距離は390マイル(約624km)。過去40マイル(約64km)以内にP1に必要な7年点検も施したという出品車。そのコンディションの良さはやはり誰の目にも確かだったのだろう。最終的な落札価格は201万2500ドル(邦貨換算約2億9180万円)と高値での決着となった。

マクラーレンのアルティメット・シリーズの中でも、いまだ最も非常に高い人気を誇るとも言われるP1。このP1のコンセプトを受け継ぐニューモデルは、はたして再びアルティメット・シリーズから誕生するだろうか。マクラーレンによれば、それは何かしらの画期的な技術が搭載可能になった時の話であるというのだが。

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