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日本で売れまくったクライスラー「PTクルーザー」は、レトロなスタイルで実用的な「ネオン」ベースの車でした【カタログは語る】

VW「ニュービートル」などと並ぶレトロな輸入車として人気に

特定の車種ではなく、ある時代をモチーフにしたクルマ……クライスラー「PTクルーザー」が日本市場に導入される際、プレス向けの試乗会のブリーフィングでそう説明があり「上手いことを言うなぁ」と感心したのを覚えている。ただしどうやらモチーフはあったようで、1934年の「エアフロー8」なる、当時のアメリカ車としてはややズングリした、評判も「ちょっとね」なスタイルのクルマからインスパイアされたデザインだったようだ。そう言われてみれば、個性的ということでは元ネタにしたくなる気持ちはわからなくもないが……。

ホットロッド風のデザインをまとった真面目な実用車

とはいえ、このPTクルーザーが日本市場に導入されたのは2000年7月だったが、この2000年から2001年時点での日本市場でのクライスラー車のラインナップといえば2代目「ネオン」(2代目が販売されていた記憶が薄いが……)、「300M」、ミニバンの「ボイジャー」&「グランドボイジャー」、それとアメリカンマッスルとも言うべきダッジ「バイパー」と、かなり個性的な顔ぶれだった。

その中にあってPTクルーザーも個性は大いに主張しつつも、もっとも身近なクルマであったことは確かだった。人によっては日産の「Be-1」などのパイクカーみたいな……といった意見もあったが、筆者はどちらかというと初代のトヨタ「bB」的な、デザインにもササるけれどその実態はごく真面目な実用車……そんな受け止めをしていた。

いずれにしろ、まず味わうべきは、どことなく往年のアメリカで流行ったチョップトップクーペやホットロッドのマシンを彷彿させるような(横や斜め後ろから見たときの前傾姿勢はその趣もあった)、今でも目に少し風変わりに映るスタイルだった。ボディサイズは全長4330mm×全幅1725mm×全高1600mm、ホイールベース2615mmとコンパクトで、クルマとしては手頃な大きさ。ただし前後の張り出したフェンダーは、クラシックカーに乗り慣れない現代人にとってはやや車両感覚が掴みにくく、壁ピタ(文字どおり壁にピッタリと寄せて停めることを最近はそう言うらしい)には慣れが必要だったのは新旧のフォルクスワーゲン「ビートル」などと同じだった。

過不足のないカジュアルな走り

このPTクルーザーには日本導入の際に開催されたプレス向けの試乗会で乗っているはず。だが、これだけキャラの立ったクルマであったにもかかわらず、あろうことかその試乗会がいつ、どこで行なわれ、誰と乗ったのかの記憶がまったくない。新型車の試乗会の記憶といえば、大概はどこで撮影をしたとか、どこでクルマを停めて自動販売機で缶コーヒーを買って飲んだとか(青い缶のジョージアだったとかその銘柄までも)覚えているものだが、このPTクルーザーに関してはじつに不思議なことにそういったデータが頭の中にまったくないのである。それだけPTクルーザー自体の存在感が強かった……ということだろうか?

ただ、このクルマがネオンをベースにしたFF車で、2Lエンジン+4速ATを搭載。アクセルを踏み込むとギュイーンといった風に加速し、乗り味もサバサバッとした感じで、言葉で表わせば「過不足のないカジュアルな感じの走り」だったことは覚えている。ついでながらボディの後ろの方の剛性感もカジュアルで、少しユルッとして思えたことも何となく思い出した。

シートアレンジや荷室の使い勝手のよさはずば抜けていた

ミニバンではなかったから床が高いわけではなく、前後席とも着座姿勢はセダンよりもややアップライトだった。手元で今見ているカタログにはリミテッドとクラシックの2グレードがあり、多分、試乗会で用意されたのは上位グレードのリミテッドのほうだったはず。だとしたらアメリカ車特有の少し甘い香りのするレザーシートに座り、ごく普通の動力性能とごく普通の乗り味を肩にチカラを入れずに味わっていたのだと思う。後席はクイックリリースラッチを外せば脱着が可能だったはず。だがアメリカ車らしくシートを外す際の腕力に自信がなく脱着を試すまでには至らなかったような気もする。

とはいえPTクルーザーの名誉のために書いておけば、マルチポジションリアシェルフパネルは高さや使い方を変えれば多様に活用できたり、シートアレンジも多彩だったりと、いかにもファミリー向けの使い勝手のよさが魅力のひとつだった。当時、日本でも、このクルマの実用性の高さを存分に活用、堪能したご家族は少なくなかったはずだ。

一方で2004年6月にはカブリオも登場した。電動開閉式の3層構造&リアガラスウインドウのファブリック製ソフトトップとスポーツバー(ロールバー)を備えた4シーターのオープンで、セダンに対し全高が90mm低く、より楽しげなドライビングが味わえるクルマだった。ソフトトップの開閉は電動で、資料にはわずか10秒で開閉可能とある。このカブリオは2.4LのDOHCエンジンを搭載。ただし車重は最初のセダンの1450〜1460kgに対し1740kgと重量級の仕上がりだった。

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