真向かいのモーテルから眺める夜景も絶品
初めて訪ねたときは夜にオクラホマシティで人と会う用事があり、軽食と外観を撮影するだけでいそいそと立ち去ってしまったが、ユー・ドロップ・インの魅力は美しい夜景を抜きにしては語れない。以前からネオンサインに彩られた姿は写真集で見ており、翌年は昼すぎに到着できるようスケジュールを調整して、ルート66を挟んだ反対側のモーテルに早々とチェックイン。
するとフロントのスタッフが笑顔で「ずいぶん早いね。今から何をするの?」と。夜のユー・ドロップ・インを撮りたいと答えたところ、何やらスペシャルな部屋をオファーしてくれるらしい。案内されて2階のダブルルームに入ると、窓からユー・ドロップ・インが一望。おまけに料金はシングルルームと同じでいいと言われ、ありがたく好意に甘えさせていただくことにした。
暗くなるまで窓辺のテーブルでコーヒーを飲みつつ、ネオンが点灯したらすぐカメラと三脚を抱えて外へ。テキサスにはフラットな平原のイメージがあるが、シャムロックは約710mと意外に標高がある。3月の半ばで身体が引き締まる冷えた空気のなか、70年前と変わらないであろう姿で街角に佇む、ユー・ドロップ・インは感動のひと言だった。
立ち位置を変え構図を変え気が済むまで撮影し、宿に戻ったら部屋でビール片手に夜景を堪能。それ以来シャムロックではこの「ウェスタン・モーテル」が定宿だ。
余談だがテキサス州は石油で大いに栄えた歴史があり、冒頭で書いたようにユー・ドロップ・インはもともとガスステーションだった。そんな場所も今や裏にEVの充電スタンドが並び、時代の流れを否が応でも感じさせられてしまう。
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