サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

映画『カーズ』にも登場したテキサス名物の映えスポットとは? 美しいアール・デコ様式の「ユー・ドロップ・イン」へようこそ【ルート66旅_20】

ルート66ファンなら一度は生で見て欲しい、ユー・ドロップ・インの夜景。右手にあるガソリンの給油機は残念ながらダミーだ

アメリカの母なる道「ルート66」の旅もテキサス州へ突入

広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。シカゴを出発して西に向かい、イリノイ州からミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州を通って、ついに中間地点にほど近いテキサス州へ。今回はルート66でも有数の名物スポット「ユー・ドロップ・イン」を紹介します。

1936年完成のユー・ドロップ・インは国家歴史登録財

オクラホマ州の西端にあるテキソーラを抜けると、ルート66は中間地点にほど近いテキサス州に突入。アラスカを除くアメリカ本土でもっとも広く、面積は日本の約2.2倍を誇る。とはいえルート66はパンハンドルと呼ばれる、北に突出したごく一部のエリアを通るだけだ。距離でいうとカンザス州に次ぐ短さではあるものの、見どころは非常に多く中身の濃いドライブが楽しめる。

まずはオクラホマから州境を越えて最初にたどり着く町、シャムロックの「ユー・ドロップ・イン(U-Drop Inn)」を紹介したい。19世紀の前半に流行したアール・デコ様式の建築で、幾何学的なディテールが施されたタワーが目印だ。設計はJ.C.ベリーという人物で、完成したのは1936年。レストランとガスステーションが独立して営業し、長きにわたってルート66の旅人を支え続けてきた。

しかしルート66が廃線になるとシャムロックに立ち寄る人が激減、当然ながらビジネスは成り立たなくなってしまう。幸運だったのは1990年代の後半に営業を終えると国家歴史登録財に指定され、170万ドルという政府からの助成金が入り往年の美しさを取り戻したことだ。それ以来カフェやギフトショップに加えて、商工会議所のオフィスなどにも利用されている。

美しいユー・ドロップ・インはテキサス州だけに限らず、ルート66全線でもトップクラスの知名度を誇るアイコン。映画『カーズ』の舞台である架空の街、ラジエーター・スプリングスにも登場する。

真向かいのモーテルから眺める夜景も絶品

初めて訪ねたときは夜にオクラホマシティで人と会う用事があり、軽食と外観を撮影するだけでいそいそと立ち去ってしまったが、ユー・ドロップ・インの魅力は美しい夜景を抜きにしては語れない。以前からネオンサインに彩られた姿は写真集で見ており、翌年は昼すぎに到着できるようスケジュールを調整して、ルート66を挟んだ反対側のモーテルに早々とチェックイン。

するとフロントのスタッフが笑顔で「ずいぶん早いね。今から何をするの?」と。夜のユー・ドロップ・インを撮りたいと答えたところ、何やらスペシャルな部屋をオファーしてくれるらしい。案内されて2階のダブルルームに入ると、窓からユー・ドロップ・インが一望。おまけに料金はシングルルームと同じでいいと言われ、ありがたく好意に甘えさせていただくことにした。

暗くなるまで窓辺のテーブルでコーヒーを飲みつつ、ネオンが点灯したらすぐカメラと三脚を抱えて外へ。テキサスにはフラットな平原のイメージがあるが、シャムロックは約710mと意外に標高がある。3月の半ばで身体が引き締まる冷えた空気のなか、70年前と変わらないであろう姿で街角に佇む、ユー・ドロップ・インは感動のひと言だった。

立ち位置を変え構図を変え気が済むまで撮影し、宿に戻ったら部屋でビール片手に夜景を堪能。それ以来シャムロックではこの「ウェスタン・モーテル」が定宿だ。

余談だがテキサス州は石油で大いに栄えた歴史があり、冒頭で書いたようにユー・ドロップ・インはもともとガスステーションだった。そんな場所も今や裏にEVの充電スタンドが並び、時代の流れを否が応でも感じさせられてしまう。

■「ルート66旅」連載記事一覧はこちら

モバイルバージョンを終了