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【フィアットじゃないアバルト3選】ポルシェとのダブルネームもあった! 激レアな毒サソリを紹介します

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Porsche/武田公実/AMW編集部

シムカなのにアバルト:シムカ・アバルト1150(1963~64)

古いイタリア製スポーツカーがお好きな方ならば「アバルト・シムカ」という車名を聞けば、自動的にフィアット・アバルト1000ビアルベロの後継車である美しいレーシングGTを思い出されるかもしれない。でも「シムカ・アバルト」という言葉を聞いたことのある方は、決して多くはないものと想像される。

もともとは第二次大戦直前にフィアット500トポリーノのフランス国内生産を行ったことに始まり、戦後も独自デザインながらフィアットとの関連の深い小型車を量産していたシムカは、1961年のパリ・サロンにて、フィアット600に大きな影響を受けつつも、まったく異なる3BOXボディを持つ「シムカ1000」をデビューさせていた。

そしてこのモデルのポテンシャルに目をつけたアバルトが、1963年夏に発表したのが「シムカ・アバルト1150」であった。

水冷の直列4気筒OHVエンジンは、シムカ1000の944ccユニットを1137ccまで排気量アップするとともに、吸排気系をアバルト流にチューンしたもの。55psを発揮する基本モデルの「1150」のほか、58psの「1150S」、65psの「1150SS」が用意された。さらにレース専用モデルの「1150SSコルサ」になると85psをマーク。オプションで「アバルト・シムカGT」と同じレース用6速トランスミッションも組みあわせることができた。

ボディは基本的にシムカ1000と共通ながら、フロントエンドには「SIMCA ABARTH 1150」の車名を記した赤いパネルが取り付けられたほか、1150S以上のモデルではフロントにラジエターとそのためのグリルが備えつけられた。

また、シムカ1000はもとよりフィアット600と共通部品が多く、ホイールハブも共用とされていたことから「フィアット・アバルト1000TCベルリーナ」と同じ、楕円形の通風孔を設けたスチールホイールを標準装備としていた。

くわえて、ベースとなったシムカ1000は4輪ともドラムブレーキだったが、アバルト版の1150と1150Sではフロントをディスクブレーキに変更。さらに1150SSでは向上したパフォーマンスに適応すべく、後輪にもディスクブレーキを採用した。

いずれのシムカ・アバルト1150もなかなかのポテンシャルを発揮し、キット/コンプリートカーともに販売実績も悪くなかったという。ところが1963年に、敵対的TOBとも受けとられかねないかたちでシムカを買収したクライスラー・グループの意向もあり、それまでの大株主であるフィアットとの関連をうかがわせるアバルトとの提携関係も、いささか強引にシャットダウン。1964年にはシムカ・アバルト1150の販売も終了となってしまう。

しかし、その後シムカは「1000ラリー2」「1000ラリー3」などの高性能モデルを1000に用意するのだが、同モデルの開発にはアバルトのノウハウが生かされたとする説も語られているようだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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