徹底してリアルな映像を追究
映画とクルマが大好きな方にお届けする連載がはじまります。ここでは懐かしの名作から最新作まで、作品に登場する名車を紹介。記念すべきPART 1は、007シリーズから『慰めの報酬』のボンドカー、アストンマーティン「DBS」をお届けします。ダニエル・クレイグの任期が終了してまだ寂しさを感じる……というダニエルファンはここで振り返ってみましょう。
リアルなカーチェイスにDBSが選ばれた
古今東西クルマの出演する映画は数あれど、常に代表格として挙げられるのが、一連の『007』シリーズ。
1965年公開の『ゴールドフィンガー』以来、この作品群ではMI6特殊機器開発部門『Q』特製の『ボンドカー』が荒唐無稽な秘密兵器を駆使して大活躍! という展開が定番となってきた。
しかし、ダニエル・クレイグが史上初の金髪ボンドとして挑んだ今世紀のシリーズでは、徹底してリアルなアクションを追求し、ボンドカーの登場シーンもクルマのギミックよりも激しいカーチェイスを見せることに重点が置かれていると思われるのだ。
この傾向が初めて明確にされたのが、2008年末にまずは英本国から公開され、その後世界中で記録的ヒットを博した『007慰めの報酬』。その冒頭においていきなり展開された、アストンマーティンDBSによる苛烈なカーアクションシーンであろう。
前作に当たる『007カジノ・ロワイヤル』は、アストンDBSのデビューの場となったが、撮影が行われた時点ではまだ発表前で人目を忍ぶためだろうか、登場は英・ミルブルックのテストコースにおける短い走行シーンのみ。かなり消化不良の残ってしまった感がある。
しかし『慰めの報酬』では、すでに正式発売済みとなったDBSを使用することで、誰の目をはばかることも無く、純粋にダイナミックなカーアクションを追求できたようだ。
湖に転落してスタントマンが重傷
2007年の製作時には、リアルなアクションを追求するあまり、舞台となった北イタリアのコモ湖に転落。スタントマンが重傷を負ってしまう事故のニュースが世界に配信されたことも記憶に新しいが、その成果は素晴らしいものだった。
いわゆる「ネタバレ」になってしまうので、あまり詳しくはお話しできないが、敵役に当たる黒いアルファロメオ「159」を向こうに回して行われたアクションシーンでは、映画史上に残るほどにハード極まるカーチェイスが展開されるのである。
ところで、『慰めの報酬』の次回作に当たる『007スカイフォール』は、2012年10月に英国を皮切りに公開された直後から、わが国を含む全世界で『007』史上最高(当時)、そして同年度のあらゆる映画の中でも最高の興行成績を挙げた。また批評家の講評でも絶賛が相次いでいるようだが、その一方でわれわれにとっては最重要項目である「ボンドカー」については、旧き良きアストンマーティン「DB5」が再登板を果たし、それ以降の作品でも重要なポジションで登場することはご承知のとおりだ。
劇中車:アストンマーティン「DBS」
生産年:2007 年
『007 カジノ・ロワイヤル』にてボンドカーとして発表されたDBS。ボンネットやトランクなどにカーボンを採用し、軽量化に貢献している。『007 Quantum of Solace/007 慰めの報酬』
公開年:2008年
上映時間:106 分
監督:マーク・フォースター
出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ