注目すべきクルマとは
10月27日に開幕する第1回ジャパンモビリティショー(JMS)で、注目しておきたいクルマがダイハツ「VISION COPEN(ビジョン・コペン)」だ。コペンという名がついていることからもわかるように、エクステリアデザインはダイハツの軽自動車コペンのテイストを受け継いだもので、ルーフも同様に電動開閉式であるアクティブトップを採用している。中身はカーボンニュートラル燃料の活用を考慮した、おそらくは4気筒の1.3Lエンジンを搭載した後輪駆動で、FFレイアウトのコペンとは違うスポーツ性を打ち出したものとなっている。
大反響を巻き起こしたS-FR
そこで思い出すのが、かつてトヨタが市販に向けた開発直前までつくり込んだコンセプトカー「S-FR」である。2015年の東京モーターショーに出展され、さらに3カ月後の東京オートサロンではレーシングカーのコンセプトモデルまで発表されたことで、当時大反響を巻き起こした。
全長3990mm×全幅1695mm×全高1320mm、ホイールベースは2480mmで2+2というシートレイアウトを持ち、発表はされなかったがおそらく1.5Lクラスのエンジンを搭載していたはずで、市販されていればGRスープラと86に次ぐ、トヨタスポーツカー3兄弟の末っ子的なポジションのクルマとなっていたことだろう。
ちなみに、S-FRレーシングコンセプトのボディサイズは、全長4100mm×全幅1735mm×全高1270mm、ホイールベースは同じく2480mm。全長はフロントのアンダースポイラーやリアのディフューザー(エアロパーツはカーボンファイバー製だった)の装備で拡大されていて、全高はおそらくは車高調整式サスペンションによって落とされたもの。車幅はワイド化されたフェンダーによって増えていて、タイヤはそのぶん太いものが装備されていた。
さらにフロントバンパーの奥にはインタークーラーが見えていたことから、エンジンは過給器付きを想定していたと思われる。実際このS-FRレーシングコンセプトが販売されたとして、ではどのレースに参戦したのか、ということを考えるのは難しい。国内でパッと思いつくのはスーパー耐久シリーズだが、参戦クラスはターボ係数の関係からST-2となるはずで、そうするとライバルは三菱「ランサー エボリューションⅩ」やホンダ「シビック タイプR」となる。そこに勝機があるのかどうか。これは妄想がはかどる。
しかし、結果としてこのS-FRは市販されなかった。そこにはトヨタ社内のいろいろな事情があったのだろうし、実情はわからない。ただ、想像をたくましくするなら、おそらくは開発が進んでいた現在のGRヤリスとS-FR、どちらが今後のトヨタのために有効であるのか、という比較がされ、新開発の4WDシステム、GR-FOURを搭載しWRC制覇という明確な目標があったGRヤリスにGOサインが出た、ということだったのではないか。
トヨタくらいの体力がある会社だったら、両方やっちまえばいいじゃねぇか、というのは、素人の考えなのだろう。いずれにしてもS-FRは、「軽量コンパクトでアンダーパワーだが運転すること自体が愉しい」というトヨタ製小型スポーツカーとして企画され、いいところまで作業が進んではいたが、市販されることなく、いいかたは悪いがお蔵入りとなってしまった。