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思わず二度見しちゃう! フィアット「チンクエチェント」で「チンクエチェント」のトレーラーをけん引!? 270万円ならむしろお買い得です

思わず二度見しちゃう! フィアット「チンクエチェント」で「チンクエチェント」のトレーラーをけん引!? 270万円ならむしろお買い得です

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

186万円以上を費やして製作されたユニークな一品

2023年9月15日に開催されたオークションに出展され、落札された「ダニエル・イゼリ・コレクション」の中の1台が、こちらのフィアット「500L」である。ヌォーヴァ チンクエチェントとしてはモデルライフ後半の1970年式。バンパーやホイールキャップのデザインなどを華やかに仕立てた「ルッソ(=デラックス)」モデルだ。

ご覧のとおり赤いボディに黒い内装が組み合わされた現車の程度は素晴らしく、何の問題もなくMFK(スイスの車検)にも合格できるコンディションだ。そして何よりの特徴は、この個体には特注トレーラーが付属しているという点。これは本物のフィアット500をドナーに、今から20年ほど前の2004年に1万1500スイスフラン(当時レートで邦貨換算約100万円)以上を費やして製作されたユニークな一品ものという。

果たしてこのトレーラーが付属した1970年式フィアット500Lは、1万6675スイスフラン(邦貨換算約270万円)という、この個体に対してごく常識的と思われる価格で落札された。昨今のオークションの話題といえば、有名な戦績を持ったレーシングマシンや超高級車が何億円で落札! といった即物的な側面ばかりが強調されがちだが、それはあくまでも結果。

われわれのようなごく一般的な市民の手に届くアイテムの中にも、ひとりのクルマ好きのコレクターが愛情を注ぎ、手塩にかけて世話をしてきた逸品があるのだ。このトレーラー付きフィアット500Lの新しいオーナーが、その真の価値を見抜いたダニエル・イゼリ氏と同様の資質の持ち主であれば、売られたクルマもまた幸せである。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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