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いまこそ振り返る「V12」のメリットと魅力とは? 最初に搭載したのはスーパーカーではなくパワーボートでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: トヨタ博物館/ Ferrari /原田 了/Courtesy of RM Sotheby's

  • パッカードは欧州の高級車に一歩もひけをとることのない高級車だった
  • アメリカ車初のアルミピストンを採用
  • パッカード・ツインシックスのコックピット
  • V12エンジンを搭載した125Sのボディサイド
  • 1974年シーズン用のマトラ・シムカMS680に搭載されるマトラ製の3L V12エンジン
  • 5万6400ドル(邦貨換算約818万円)で落札されたフェラーリV12エンジン テーブル
  • 5万6400ドル(邦貨換算約818万円)で落札されたフェラーリV12エンジン テーブル
  • 5万6400ドル(邦貨換算約818万円)で落札されたフェラーリV12エンジン テーブル
  • 5万6400ドル(邦貨換算約818万円)で落札されたフェラーリV12エンジン テーブル
  • はじめて自動車にV型12気筒エンジンを導入したモデルといわれる「パッカード・ツインシックス」
  • 1947年にレースデビューしたフェラーリ「125S」
  • アメリカの大統領や、ロシアの皇帝を始め世界中の王室や元首にも愛用されたパッカード ツインシックス
  • 1952年アルファ ロメオ V12エンジン

最後の楽園と化したV型12気筒エンジン

二酸化炭素排出量を低減させることが全世界的目標とされている昨今、自動車用のパワーユニットもダウンサイジングを経て、電動化へのかじ取りが否応なしに進められている。この巨大なうねりの中、高級さや高性能のシンボルとして前世紀末から今世紀初頭に最盛期を迎えたV型12気筒エンジンも、その多くがV8ターボ(+ハイブリッド機構)に取って代わられ、今やV12は一部の高級スーパーカーないしはハイパーカーのみに許された「最後の楽園」と化しているといえるだろう。この上なくロマンティック、そしていずれ伝説となってしまいそうなV12は、どのようにして誕生し、なにが優れていたのか……? その謎を探ってみよう。

はじまりはスピードトライアル競技用ボートの原動機

19世紀末に登場したガソリンエンジンは、第一次世界大戦中の航空機の進化とともに飛躍的に進化をとげた。また第二次世界大戦中、欧米の軍用機では液冷V12エンジンの搭載例が多かったことから、V12エンジンのはじまりは航空機エンジンから……? とも思われがちである。

じつは筆者もそう想像していたのだが、調べてみるとV12エンジンを初めて搭載した乗り物は、1904年に英国ロンドンの「パットニー」社製のエンジンを載せた、スピード競技用のパワーボートだったことがわかった。

パットニー社の創業パートナーの名から「クレイグ・ドルワルド(Craig-Dörwald)」エンジンとして知られたV12ユニットは、同社がすでに生産していたVツインをベースにしていたことから、Vバンク角は90度。弁形式はサイドバルブで、排気量は18.4Lという巨大なものだった。V12エンジンの各バンクは、もとよりバランスに優れた直列6気筒エンジンとして機能し、それぞれプライマリーエンジンとセカンダリーエンジンとして振動を打ち消し合うことも可能なため、内燃機関としてはもっともスムーズかつ高回転化にも対応できるのが、最大のメリットとされている。

1904年にパワーボート用として登場したV12エンジンが、真打ちともいうべき航空機に載せられたのは5年後のこと。1909年に仏ルノーが航空機用として開発した空冷V12ユニットは、もっともバランスに優れた60度のVバンク角でFヘッド(吸気のみOHVのサイドバルブ)のバルブ機構を備えていた。排気量は12.2L、1800rpmで138psを発生したといわれている。

その後、第一次大戦中からV12は航空機エンジンとして欧米に伝播。そして第二次世界大戦時には全盛期を迎えたものの、戦後になると重量が軽いわりに高出力、しかも構造が簡単なジェットエンジンやターボプロップエンジンの導入により、航空機の分野ではV12エンジンの時代が終わりをつげ、乗用車用のガソリンV12、鉄道・船舶用のディーゼルV12があとに残ることになった。

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