スバル初の2Lエンジンを搭載
2023年7月、創立70周年を迎えたスバル。そんなスバルの歴史の中でも1989年2月に発売された初代「レガシィ」は「スバルがクルマづくりの原点に返って本質を追い求めたマイルストーン」(『富士重工50年史・六連星はかがやく』より)に位置づけられる、まさに記念すべき1台だった。
「ゼロから理想のクルマをつくりたい」の思いで開発
発売の直前、1989年1月には、アメリカ・アリゾナ州のテストコースで10万km世界速度記録に挑戦。3台の4WDセダンが昼は暑く夜は零下、豪雨にも見舞われた中、昼夜問わずに走行。テスト車3台は無事に完走、地球2周半に相当する距離を447時間44分9秒887、連続19日走り続け、平均時速223.345km/hの世界記録を樹立した。もちろんこの記録への挑戦と達成は、それまでの経験を踏まえ、車両開発部門、生産技術・製造部門が一丸となり、完成車品質の向上へと取り組んだその成果の現れ、賜物にほかならなかった。
……と、国営放送の番組なら田口トモロヲ氏が(「スバル360」の回と同じように)淡々とナレーション原稿を読んだであろう初代レガシィの開発プロジェクトは、「ポスト・レオーネ」の旗印のもと、1985年7月に正式にスタートを切ったのだそう。だが、その前には2年間の先行開発期間があり、そこで開発メンバーの「ゼロから理想のクルマをつくりたい」の思いが高められ、気持ちのよい、質の高い走りを持つクルマを作るのだという目標が定められたのだという。
写真のカタログは、セダン、ツーリングワゴンともに1989年1月の初代登場当時のもの。2代目以降のカタログをご存知の方なら、初代はセダンとツーリングワゴンとで、こんなにも趣の違う表紙のカタログだったのか……と思われることだろう。
これは2つのボディタイプこそレオーネ時代から引き継がれたものだったが、とくにセダンは、初の2Lエンジンを搭載するにあたり、より高品位な上級クラスを意識したことをアピールするための手段でもあったはず。臙脂(えんじ)の地色に車名ロゴを置いたデザインは非常にシンプルで、車名ロゴがゴールドではなくシルバーというところに、スバルらしい奥ゆかしさも感じられる(ように筆者は思う)。
スタイリングは、セダン、ツーリングワゴンともにサッシュレス構造の4ドアとし、セダンはリアクオーターウインドウからリアウインドウまでガラスエリアを連続させた構成。一方でツーリングワゴンも、後々の世代でもスタイルが踏襲されることとなった全周でラウンドさせたガラスエリアを用いつつ、さらに前席頭上からルーフをキックアップさせたいかにもワゴン専用であることをアピールするボディ形状が用いられた。
ホイールベースはセダン、ツーリングワゴンともに共通の2580mmだったが、ルーフ高が高められたツーリングワゴンの頭上空間は前/後で975mm/1010mmと、セダンの925mm/885mmに対して大きく余裕をとっていたのがワゴンならではだった。