快適性もあるRらしさとは何か
基準車は加藤氏が意識し始めたように普段乗っても快適さがあり、一方、速さが重要なVスペックもあるという彩が、GT‒Rの価値を広げていくことになる。また今日のR35GT‒Rの有姿にもつながっているのではないかと言う。
「普段使いもできて、かつGT‒Rらしさとは何か? そういうことを考える余裕をR34で得ることができました」
あらためてスカイラインGT‒Rとは、加藤氏にとって、あるいは日産の実験部のドライバーにとって、どのような意味があるのか。
「かつて渡邉衡三さんが、速さがすべてではないけれどたいがいのことは速さで許されると言ったことがあります。GT‒Rは速いという枕詞があることによって、そういうクルマを開発できるのはテストドライバーになりたくてなった自分にとって、ドライバー冥利に尽きます。速さだけがすべてではなくても、GT‒Rのような速さや安定感は知っていたほうがいい。R32が出るまでやはり速いクルマ、すごいクルマは、ポルシェやBMWといった意識がどこかにありました。しかしポルシェ959にはモード切り替えがあったけれど、R32は制御の切り替えなしに舗装路から氷雪路まで走れるようにできたことで、その意識も変わりました。GT‒Rがあることで誇りになるし、励みにもなります」
開発に関わった3台のGT‒Rの特徴を形容すると、という問いに加藤氏はこう答えた。
「R32はほのぼのしている。R33は猛々しい。R34はジェントル。R32のときは、こんなクルマを世に出して大丈夫かと思った。R33はマイナス21秒のロマンという速さしかなかった。R34はこの世代のGT‒Rの結実でしょう」
いい得て妙の評だ。
R32からR34にかけてのGT‒Rは20世紀の日本車の走りの集大成として、技術の日産の粋を集め、現代の名工テストドライバーが築き上げた至宝である。
(この記事は2023年6月1日発売のGT-R Magazine 171号の記事を元に再編集しています)