チームが目指すのはル・マン24時間レース
シリーズ最終戦の第6戦となる英国耐久選手権が、英国レスターシャーにあるドニントンパークのGPコースで開催された。障がい者ドライバーだけで参戦をしているTEAM BRITもこのシリーズに参戦をしているが、今回ここに、日本の車いすレーサー青木拓磨選手が合流し、エースカーの68号車を駆り、2時間の耐久レースを走り切った。
一般参戦と同じ枠で挑戦
青木拓磨選手は、ポケバイからモータースポーツ活動をスタートし、国内での活躍の後、ロードレース世界選手権(現Moto GP)に1997年からフル参戦。翌年の1998年シーズン前のテストで転倒を喫し、下半身不随となってしまった。しかし、2輪から4輪にそのレースフィールドを変更し、車いすのレーシングドライバーとして、積極的に各種レースへ参戦をしている。
2023年8月にはFIA公認ラリーレイドである「アジアクロスカントリーラリー2023」で総合優勝を果たしている。また、2021年には、ル・マン24時間レース本戦に、四肢切断のフレデリック・ソーセ氏率いる「SRT41」より、同じく車いすドライバーのナイジェル・ベイリー選手とともに参戦した。
「TEAM BRIT」は、チームドライバー全員がどこかに機能障がいを持っているドライバーで構成されているイギリスのチーム。その「SRT41」同様に、歴史あるル・マン24時間レースに参戦をもくろんでいる。チームオーナーのデイブ・プレーヤー代表は、2016年にル・マン本戦に出場を果たしたフレデリック・ソーセ氏の偉業を、そしてそのソーセ氏が続いて行った障がい者ドライバーで構成された「SRT41」のル・マン24時間レースへの参戦をたたえながらも、われわれはガレージ56枠ではなく、一般参戦と同じ枠でこれに挑戦すると明言している。
そのチームBRITが参戦するのは英国耐久選手権(British Endurance Championship)、通称BECである。年間6戦を行っているシリーズで、最終戦となるこのドニントンパーク戦に、マクラーレンのGT4マシン「Mclaren 570S GT4」を2台走らせる。
マシンは特殊なものではなく、チームが使用しているステアリングに特徴がある。ステアリング裏にあるパドルでアクセル(右パドル)とブレーキ(左パドル)を操作し、シフト操作はステアリングコラム内にあるボタンを使用する。各選手が自身のステアリングをカスタマイズすることで、自分のステアリングひとつ持ち込めば、それぞれにあったマシンになるという、ある意味理想のシステムといえる。
青木拓磨選手が乗る68号車には、アーロン・モーガン選手がペアドライバーだ。15歳の時にモトクロス競技でのジャンプで着地に失敗し、背骨を骨折。胸椎の脊椎損傷で半身麻痺となっている選手だが、このチームBRITから英国GT選手権に出場もしている。
もう一台の67号車には、先天性四肢障がいで、左手3指欠損、右手2指欠損のジェームス・ホイットレー選手と、2年前にバイクの事故で右足ひざ下を欠損したポール・フリック選手が乗る。
この週末のドニントンパークは、BMW MINIや各種クラシックカーがパドックを占め、この2日間だけで18ものレースが開催される、まるで富士チャンピオンレースや鈴鹿クラブマンレースのようなさまざまなレースが開催されていた。パドックを見渡すと、チームBRITだけでなく、多くの車いすドライバーを見かけることができ、障がいを負ってもモータースポーツを楽しむということ自体それほど特殊なことではないことも見て取れる。