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究極の愛されキャラ、オイルに気を使いながら東京へ! 街灯のない区間を走行中に新たなトラブルが発生!?【週刊チンクエチェントVol.23】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之

チンクエチェントの不思議な魅力

その先にある藤枝パーキングエリアをうっかりスキップしてしまったため、次に停まったのは静岡サービスエリアだった。掛川パーキングエリアからは30kmほど。岡崎東インターチェンジからは105kmほど走った計算だ。

普通乗用車のエリアの端の方、ガラガラに空いてるところにゴブジ号を停めてエンジンフードを開けようとしたら、あっちの方からちょっと人相の悪いおっさんが小走りでこっちに向かってくる。

えっ? 因縁でもつけられるのか? 何か誰かに迷惑かけるようなことしちゃったっけ? してねーよな。あ。巡航スピードが遅いからか。謝ろ……。

するとちょっと人相の悪いおっさんは10mくらい先のところで立ち止まり、僕の方に向かってグッと右手を突き出してきた。

……へっ? サムアップ? おっさん微笑んでる?

おそらくポカーンとしてただろう僕に向かって、ちょっと人相の悪いおっさんはこんな言葉をかけてきた。

「にいちゃん、グッジョブ! かっこいいぞ! がんばって走れよ!」

おそらくまたしても僕はポカーンとした表情を浮かべてただろうと思うのだけど、ちょっと人相の悪いおっさんは僕に言葉をかけるや否や、クルリと背中を向けて小走りであっちの方へと戻っていっちゃったから、気づいてなかったとは思う。僕はその背中に心を込めて会釈した。もちろん、ありがとうございます、の気持ちだ。あまりに突然で思いつきもしなかったのだけど、ちょっと人相の悪いおっさんを呼び止めて記念写真を撮ればよかった。

そう、チンクエチェントに乗ってるときにそれからも何度となく似たようなことを経験した、その第1回目だった。チンクエチェントはただそこにあるだけで、あるいはただ走ってるだけで、人を笑顔にさせる強力なチカラを持ってるのだ。だから普通にクルマを停めただけで声をかけられたりするのは珍しくないし、写真を撮られることも珍しくないし、どこに乗っていっても大歓迎していただける。そういうクルマ、ほかにいくつ存在するのだろうか? 究極の癒しキャラにして究極の愛されキャラ、なのだ。

が、僕自身に関して述べるなら、当時は癒されてばかりというわけじゃなかった。もちろんこのときも。

ふと我に返ってエンジンフードを開くと、その内側にはかなりペッタリとオイルが付着してる模様。それでもオイルが漏れてる箇所も噴いてる箇所も見当たらず、いったいどこから漂い出てくるのかさっぱりわからない。何なんだろうなぁ……と思いながらレベルゲージを引き出してみると、あー、やっぱりちょっと減ってるかも……である。高速道路100kmほどでこのくらい減るなら、その先の180kmほどの道のりを考えて、少し継ぎ足しておく方がいいかも……。

そう考えて給油エリアに移動し、燃料を補給しつつオイルも補充する。ちょろちょろと様子を見ながら注いでいって、0.3Lほど。オイルの噴出が一気に増えたりしないかぎり、都内の自宅まではいい感じで量をキープできそうなところを狙った。

そして時間も時間だったから施設内の“焼津丸”で釜揚げしらす丼を掻っ込み、静岡サービスエリアをスタートする。もうとっぷりと夜の高速道路、だ。僕は「下道と合わせて200kmぐらい走っただけで0.3L減るっていうのは、たぶん普通じゃないよなぁ……っていうか、明らかに減ってるってことそのものが普通じゃなさそうな……」なんて考えながら、また左車線の左端ベタベタのラインをGPS70km/hキープくらいで巡航していた。

……あれ?

街灯のない区間。ゆっくり──だけど健気に──走る、ゴブジ号。僕はふとあることに気づいてしまい、どういうこと? 今度は何があった? マジかー! と、ちょっとばかりイヤな汗をかきはじめることになったのだった。

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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