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【東京モーターショーに登場した幻の国産スポーツカー5選】市販化が熱望された「童夢‐零」「MID4」「RX500」を現在見学できる場所は?

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/いすゞ/マツダ/AMW編集部

  • 1970年のTMSに出展されたいすゞのベレットMX1600
  • 1969年のTMSにベレット1600MXの名で出展されていたモデルの後継
  • エンジンは、117クーペと共通の1.6L直列4気筒ツインカムで最高出力は140ps
  • 両側ドアを開けた童夢-零。ガルウィングドアと呼ばれることも多いが、正確にはシザースドア。ドアの前端、ボディのショルダー部分に回転軸の支点を持ち、まるで鋏のように開閉することでこう呼ばれている
  • 童夢-零のサイドビュー。全体的にはウェッジシェイプが利いていて、キャビン部分も小さくまとまっているために、980mmに抑えた全高の低さがよりいっそう強調されている
  • 童夢-零のフロントビュー。平面的でのっぺりした印象のノーズ上面カウルだが、当時としては珍しく風洞実験を重ねた結果、空気抵抗は小さく収まっているとも伝えられている
  • メーターナセルなどは一般的なデザインで仕上げられているが、右サイドにまとめられたスイッチ類は新鮮。アルミ製で逆V字の2本スポークを持つステアリングホイールは童夢オリジナルだ
  • 童夢-零に搭載されたエンジンは2.8L直6シングルカムのL28。当時としては比較的ハイパワーで手に入れやすかったことで選ばれたという
  • 日産MID4-IIのフロントビュー。広いトレッドと、それを覆うフレアされたフェンダー以外に、このアングルからはV6ツインターボを搭載したスーパースポーツを訴えるポイントは多くない
  • 日産MID4-IIのリアビュー。キャビン部分がコンパクトにまとまっているのに対して、ショルダー部が大きく張り出していて、大きく盛り上がったエンジンカバーとともに、圧倒的な存在感をアピールする
  • 2本のステーでドアにマウントされるドアミラー。ドアとミラーを別物として空気抵抗の低減を図る手法で、当時としては最新のスタイリングだった
  • 日本自動車博物館に収蔵展示されているジオット・キャスピタの1号機。ヘッドライトやウインカー。そしてサイドミラーなど、細かく見ていくと2号機との違いは少なくない
  • モダンなスーパースポーツカーとして、コンベンショナルな佇まいを見せるジオット・キャスピタの2号機。空気抵抗だけでなく揚力(リフト)の低減も図られたスタイリングだ
  • ジオット・キャスピタ2号機のサイドビュー。そもそもがフラット12を搭載するように設計されていたからか、テールが長く、キャビンが大きく前進しているのが特徴となっている
  • ジオット・キャスピタの2号機のリアビュー。ボディと別カラーのリアウィングは、速度によって上昇し、高速域でのスタビリティを引き上げている
  • 両サイドのドアをフルオープンしたジオット・キャスピタの2号機。童夢の処女作である零と異なり、こちらは紛れもないガルウイング式
  • ダッシュボードと同色のメーターナセル内にはスタック(STACK)製の回転計(左)と速度計が並ぶ。回転系は1万2000回転まで、速度計は310km/hまで刻まれ、その高性能ぶりをアピールしている
  • ミッドに搭載されたジャッドGV型3.5L V10エンジン。公称575psのハイパワーは、アナザーワールドのハイパフォーマンスを体験するには十分なものがある

高い評価を受けていたにもかかわらず市販化されなかった幻のモデルたち

これまで毎年のように、数多くのクルマが誕生してきました。記録的に販売台数を伸ばしてモデルチェンジを繰り返し、長寿モデルとなったクルマもあれば、反対に高い評価を受けながらも販売台数を伸ばすことなく1代限りで姿を消したモデルもありました。そうした販売モデルとは別に、1台だけ作られたクルマ、私たちがいくら欲しいと思っていても手に入れることができない、言わば「幻のクルマ」も少なくありませんでした。今回は、そんな記憶に残る「幻のクルマ」を振り返ってみることにします。

モーターショーには数多くのコンセプトカーが登場していた

2023年からジャパン・モビリティ・ショーへと名を変えた東京モーターショー(TMS)には毎回のように、数多くのコンセプトモデルが出展されてきました。その中には現実味の薄い、まさにショーのために誕生したコンセプトモデルもあれば、将来的な市販を目指したモデルも少なくありませんでした。

そんなコンセプトモデルの中で印象に残った1台が、1970年の第17回東京モーターショーに出展されていたマツダ「RX500」でした。同年のTMSにはトヨタと日産、国内ビッグ2からトヨタ「EX7」や日産「270X」といったミッドシップのコンセプトカーが出展されていましたが、2ローターのロータリー・エンジン(RE)をミッドシップに搭載したRX500の方が随分と現実的でした。

と言うのもライバル(?)が、内外装ともに超未来的なデザインだったのに対して、RX500は、鋼管スペースフレームだったことを別にすれば、スタイリングもインテリアも、随分現実的なものに仕上がっていましたし、実験車という役割からカウルワークには各種のプラスチックを使用するなど先行開発車としての「実務」を担当しながらも、同時に当時のマツダが進めていたREのフルラインナップ化についてもフラッグシップという位置づけでもあり、販売に向けては多くの期待がよせられていました。

メカニズムの概略ですが、先に触れたように鋼管スペースフレームのミッドシップに「カペラ」と同じ573cc×2ローターの12Aエンジンを搭載し、サスペンションは前後ともにパイプアームを組み合わせたダブルウィッシュボーン式と、当時のレーシングカーに倣ったパッケージとなっていました。ボディのアウターパネルは樹脂製で、左右のドアはフロントのバルクヘッド上部とフロントウインドウ上部の2カ所にヒンジを持つバタフライドア、そしてヘッドライトはリトラクタブル式で、ミッドエンジンと合わせてスーパーカーの「三種の神器」を全て備えていたことになります。

3リッターV6エンジンをミッドに搭載した4WDのスーパースポーツ

そんなRX500以上に現実的だったコンセプトカーが、第27回となる1987年のTMSに出展されていた日産の「MID4-II」。日産が研究開発を進めているさまざまな新技術を盛り込んだ実験車でしたが、「II」というからにはもちろん「I」もありました。こちらは1985年のフランクフルトショーでお披露目されています。両車は、エンジンをミッドに搭載した4輪駆動という基本パッケージは共通していました。しかしIは日産が当時、主にサファリラリーにスポット参戦していた世界ラリー選手権(WRC)の最上級カテゴリーとして企画が進められていたグループSへの参戦を期して開発されたのに対し、IIはIの反響が大きかったことで、実際にスーパースポーツとして市販すべく開発された、という違いもあり、スタイルも含めて大変更が施されていました。

メカニズム的に見ていくと、Iでは前後ストラット式だったサスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンに、リアもマルチリンク式へと変更され、搭載するエンジンも3L V6ツインカム(V6なので4カムシャフト)のVG30DEからIIではツインターボで武装したVG30DETTとなり、搭載方向も横置きから縦置きにコンバートしています。前後を逆に搭載し、プロペラシャフトからセンターデフを介して前後輪を駆動するレイアウトとなり、エンジンの出力は230psから330psにパワーアップ。スタイリングも一新され、スポーツ・クーペからミッドエンジンをアピールするスーパースポーツに変身していました。

市販化に向けた準備が進んでいた

さらによりリアリティの高かったコンセプトカーとして、いっそう期待の高かったモデルが1970年のTMSに出展されたいすゞの「ベレットMX1600」でした。その前年、1969年のTMSに「ベレット1600MX」の名で出展されていたモデルの後継で、より一層市販モデルとしての佇まいを見せていました。

1969年の1600MXはトリノに本拠を構えるカロッツェリア・ギアがデザインとボディ架装を担当し、日本から送られた箱型断面のサイドシルとバルクヘッドで構成されたシャシーにスタイリッシュなボディを構築しています。ただしスタイリッシュではあったものの、当時の国内では少し進み過ぎたデザインとなっていました。

この1600MXをベースに開発されて1970年のTMSでお披露目されたMX1600は、リトラクタブル式のヘッドライトを固定式の4灯式ヘッドライトに変更し、リアの大きなガラスウインドウをベネシャンブラインドに替え、さらにボディパネルをスチールパネルからFRPカウルに変更。いずれも軽量化には大きく寄与していました。エンジンは、「117クーペ」と共通の1.6L直列4気筒ツインカムで最高出力は140ps。それをミッドシップに搭載するシャシーは、基本的にレーシングカー(グループ6のレーシング・スポーツ)のいすゞ「ベレットR6クーペ」と共用していてフロントサスペンションもR6と同様のダブルウィッシュボーン式でしたが、リアサスペンションはストラット式に交換され、市販モデルに向けての準備が進んでいることが窺われました。

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