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走行55万キロの日産「セドリック」は個人タクシーなのになぜMTに換装した? トヨタ「クラウン」を選ばなかった理由とは

リップスポイラーはオートプロデュースアクセス製。オーテックのステッカーは奥様が作ってくれたものだ

オーテックの沼南里帰りミーティングで「過走大将」を受賞

2023年10月7日(土)に大磯ロングビーチで行われた「オーテック オーナーズグループ 湘南里帰りミーティング」。新旧さまざまなオーテック車が一堂に会するこのイベントでは、各種の賞も参加者に贈られた。その中で最も過走行なクルマにその名も「過走大将」という賞が贈られたわけだが、受賞したのはこの「セドリック」のタクシーだ。55万kmという走行距離は通常のタクシー営業で稼いだマイルなのだ。

タクシードライバーがMT車にこだわる理由

タクシードライバー歴は約30年という壁田さん。このセドリックは8年前に購入したそうだ。個人タクシーになれば好きな車種をタクシーに出来るわけだが、壁田さんは個人タクシーとして営業するならばマニュアルがいいと切望していたのだ。そこでこのセドリックを購入し、わざわざMTに換装したというからMTへのこだわりは相当なもの。その前にも他の車種で個人タクシーをしていたため、個人タクシー歴は約10年以上だが、このセドリックによってようやく理想的な営業体制になったといえるだろう。

もともと他のエリアでタクシードライバーをしていたそうだが、東京のタクシー会社に移ってから社員時代はずっとAT車だったとのこと。

「クラッチ踏んでないと疲れるんです。クリープが嫌いで……」と語っていた壁田さんだが、MTを選ぶのはタクシードライバーらしい理由もある。それはあらゆるシチュエーションで静かにゆっくり発進できるからだそうだ。半クラッチやギアの固定が出来るMT車ならではのテクニックといえる。お客様に優しいシームレスな運転はMT車だからこそ可能であるというのが壁田さん流のこだわりなのだ。

後部座席の広いセドリック ブロアムロングVIPをチョイス

ではなぜセドリック、しかもブロアムロングVIPを選んだのだろうか? MTのタクシーといえば、まだ地方だとトヨタの「コンフォート」や日産の「クルー」で見かけることができる。そちらの方がいろいろとラクだったのではないか? そんな疑問を壁田さんにぶつけてみると「だって狭いじゃないですか」との答えを頂いた。たしかにセドリックの方が後部座席の居住性は高く、よりお客様向けのクルマと言えるだろう。

当初は「クラウン」かレクサスのセダンをMT換装しようと考えていたそうだ。しかし、想像よりもMT化の予算がかさんでしまうことが判明した。そこで、金額的にMT化のハードルが低く、リアシートの居住性に優れるセドリックを選択したというわけだ。リアサスがセミトレーリングアームでコンフォートやクルーと比べると乗り心地に優れているのもセドリックの長所だと語っていた。

ワタナベのホイールは許されなかったけど……

こうして壁田さんが仕事の相棒として選んだセドリック。現在も年間4万kmを走行している現役タクシーマシンなだけあって、タクシーメーターや提灯などはどれも本物の装備だ。ホイールも交換されていて、DIYで塗装されている。

「ほんとはワタナベのホイールが欲しかったんですが、金額的に妻から許しが出なくて……似たデザインを塗ったんです」

しかし、さらに話を聞いてみると壁田さんの奥様は仕事とクルマへのこだわりに理解がある方のようだ。タクシーに貼られたステッカーは奥様が手作りしてくれたアイテム。また、フロントガラスに飾られていたアピールポイントも奥様が作ってくれたそうだ。他の参加者もこのアピールポイントの札を飾っているが、長距離をアピールするために壁田さんの物はオドメーターが配置されたオリジナルのデザインとなっている。理解のある奥様でなければこんなことはしないだろう。

* * *

2022年に里帰りミーティングへ初参加し「過走大将」を受賞。2023年も連続で同賞をゲットして殿堂入りとなった壁田さん。最後にこのクルマでの今後を聞いてみると、

「75歳までこのクルマとともに現役でタクシー営業を続けたい」

と語ってくれた。個人タクシーは75歳までが年齢制限になっているそうだ(過疎地域を除く)。壁田さんはまだまだこのセドリックを相棒に、シームレスな発進とシフトチェンジでお客様を運び続けるだろう。

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