中国でEVの普及が進む理由とは
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「中国の電気自動車施策」についてです。中国では電気自動車(EV)が一気に普及しています。それには明確な理由があったのです。
内燃機関を楽しむには巨額の費用が必要
中国がEV大国を目指して精力的に施策を重ねているのはご存じのことと思います。「内燃機関では追いつかないから電気自動車に注力する」というのは中国政府の狙いであり、そのためにさまざまな策を講じているのです。共産主義ですから、それが国民の思いと隔たりがあろうが強制するのが中国であり、そのために驚くほどの速さでEV化が進んでいます。
とくに上海は強権的な施策により、EV比率は驚くばかりです。感覚的には、街中を走っている自動車の約3分の2はEVのような気がします。ガソリン車はほんのわずかですね。パッと眺めた範囲のすべてがEV車であることも少なくありません。
なぜそれがわかるのか……。
中国では、EV車にはグリーンのナンバープレートが交付されます。内燃機関のモデルはブルーのナンバープレートです。ですから一目瞭然ですね。
EV車のグリーンナンバプレートは無料で発給されます。一方、ブルーのナンバープレートを取得するには、約150万円の供託金が課せられます。しかも、月に一度のオークションで落札しなければなりません。落札倍率は約5%だといいますから、運の悪い人は2年ほど待たなければなりません。
しかも、グリーンナンバーは税制上の恩恵があり、ブルーナンバーは重税が課せられます。
じつは、ブルーナンバーを取得するのに約150万円の供託金が課せられるのは上海だけです。中国はとても広いので、街それぞれでEVに対する恩恵はさまざまです。ブルーナンバーに供託金が課せられない街もあります。だったらそこでブルーナンバーを取得して上海に乗り入れればいいように思いますが、上海の中心街に乗り入れられるのは上海ナンバーだけなのです(時間帯によりますが……)。
ですから、上海で生活するには、恩恵のあるグリーンナンバーを取得するか、もしくは高額な資金を投じてブルーナンバーを取得するしか方法はないというわけです。これではEV車が増えるのも道理ですよね。
中国のEV化は目覚ましいばかりの速度で進んでいますが、それは習近平・中華人民共和国国家主席の、中国をEV大国とする野望と強権的な施策に支えられているのです。