ズバ抜けた高性能ぶりをアピールした
「シティは、ニュースにあふれてる。」これは初代ホンダ「シティ」が1981年11月の登場時から使っていたカタログコピー。だがこのコピーに偽りなし……といったところで、毎年、何かしらの新規バリエーションを登場させては話題を提供、まさにファンの目と気持ちを離させないニュースで我々を楽しませてくれた。
国産車初のゼロリフトを達成したスタイル
そんな中でもひと際注目を浴びたのが「ターボ」だった。当時の国産車といえば、1979年の「セドリック/グロリア」を皮切りに、各社からターボ車が続々と登場していた時期。その中でホンダにとって4輪車初のターボ車だったのが、1982年9月に登場したこのシティ ターボ。当時、筆者も登場直後に撮影で実車に乗ったが、フル加速でトルクステアも辞さない超過激なふるまいに舌を巻いたのが懐かしい。
「100psハイパーターボ」と呼ばれたCVCC水冷直列4気筒OHCターボエンジンのスペックは最高出力100ps、最大トルク15.0kgm。これはノンターボ比で出力、トルクともに実に50%アップ、リッターあたりの馬力は81.2ps/L、馬力あたりエンジン重量は0.96kg/psと軒並みケタ違いの数値というものだった。
さらに加速性能は0-400mが16.3秒、0-100km/hが8.6秒(いずれも2名乗車時ホンダ測定値)、パワーウエイトレシオは6.9kg/ps。ターボチャージャーについては乗用許容回転数1万8000rpmでありながらも当時の表記によれば10モード燃費18.6km/L、60km/h時燃費27.0km/Lとし、当時のターボ低燃費第1位でもあるなど、シビれるようなスペックを打ち出していた。
もちろんベースに対して90%以上の部品が新設計だったというエンジン本体には、新技術もふんだんに投入。さらに軽量化も徹底し、たとえば赤いヘッドカバーはスチールの約3分の1、アルミと比べても約2分の1というマグネシウム製。エアクリーナーは当時、日本初だったオール樹脂製を採用するなどした。ターボチャージャーについてはIHI製の50mm小径を採用、軽量化とレスポンス(ターボラグの小ささ)を求めていた。
サスペンション系も当然ながらターボ専用。前後ストラットの4輪独立懸架をベースに、プログレッシブコイルスプリング、高剛性中空スタビライザーなどを採用。クラス初のフロントのベンチレーテッドディスクブレーキ&セミメタルパッド、165/70HR12スチールラジアルタイヤもクラス初の標準装備のひとつ。アルミホイール、スチールホイールともにリム幅は4.5J。
国産車初のゼロリフト(揚力係数CL=0)を達成したスタイルは、パワーバルジ、幅広いモールを始めとした専用デザイン。インテリアでは専用バケットシートの採用をはじめ、370mmの小径スポーツステアリング、液晶式ターボグラフィックメーターを備える専用メーターを装備した。
存在感のあるアピアランスが印象的だった
一方で初代ターボの登場からわずか13カ月後、颯爽と登場したのが「ターボII」だった。「記録やぶりの、ニュースです。」とカタログにコピーが記され、「ブルドッグ」の愛称で呼ばれた“II”では、何といっても存在感のあるアピアランスが印象的だった。ボンネット上のパワーバルジもより大型化、前後のブリスターフェンダーの張り出しはコンパクトボディをより力強く見せ、まさにブルドッグとは言い得て妙……といったところ。
当時の広報資料には「大地に足を踏んばり、いままさに走りださんと身構える“ブルドッグ”のイメージ」と説明がある。ちなみにボディサイズは最初のターボに対して全長+40mm(3420mm)、全幅+55mm(1625mm)、全高-10mm(1470mm)。トレッドはフロント/リアで+30mm/+20mmの1400mm/1390mmとなり、タイヤは185/60R13 80Hへとサイズアップを果たしている。
インテリアについては、バケットシートが前後・左右からすっぽり腰をホールドする(カタログの表記より)新しい設えとなっていたほか、リアシートに関しては3段階の高さ調整が可能なピローを備え、さらにシート自体が脱着可能となっていた。メーターはグラフィックターボメーターを中央に据えた専用のデザインを採用。インパネも、いたずらにデコラティブにするのではなく、あくまでもシンプルに作られているところは、今見ると新鮮で好感がもてる。メーターの文字、シフトパターンの表示、空調パネルや各種スイッチのアイコンなどの色がオレンジで統一されているのもスマートだ。
肝心のターボIIのエンジンだが、スペックは最高出力が110ps、最大トルクは16.3kgmへと、元のターボに対して高められた。F1由来のPGM-FIをターボの制御(ウェストゲートバルブの制御)にも使ったり、空冷式インタークーラーを採用したりといった技術的な方策が、高性能化を実現。迫力に溢れたルックスだけでなく、ズバ抜けた高性能ぶりをアピールしたのがターボIIだった。