今後も価値が高まっていく傾向にある1台
スバルと言えば水平対向エンジンとシンメトリカルAWDがアイデンティティとなっていることはご存じの通りだが、過去に自社生産していた軽自動車においてもスバルらしさが前面に押し出されていた。残念ながらスバルは2012年で自社での軽自動車の開発・生産を終了し、現在はダイハツのOEMモデルを販売しているが、それ以前のスバルの軽自動車は4気筒エンジンと4輪独立サスペンションという他メーカーの軽自動車とは一線を画すメカニズムを持っていたのである。
サファリラリーで見事クラス優勝!
そんな過去のスバルの軽自動車の中でも高い運動性能を持ち、現在でも多くのファンを抱えるモデル、それが1992年から1998年まで販売されていた「ヴィヴィオ」である。
それまでスバルの軽自動車としてラインナップされていた「レックス」の後継車種としてリリースされたヴィヴィオは、スタンダードな3ドアと5ドアのハッチバックボディを持ついわゆる軽セダンであり、乗用モデルと商用モデルがラインナップされていた。
ただ、全車4気筒エンジンと4輪ストラットの独立サスペンションを採用しており、走りのポテンシャルは非常に高いものがあったのだが、その地位を確固たるものとしたのが、ホッテストモデルの「RX-R」であることは間違いないだろう。
このRX-Rには、直列4気筒DOHCのスーパーチャージャー付エンジンが搭載され、最高出力は当然のように自主規制値マックスの64psを発生。ただ一説にはこの数値はあくまでカタログ上のもので、実際にパワーチェックを行うとノーマル状態でも64psを超える個体も珍しくなかったという逸話もあるほどだった。
なお、このRX-RのエンジンはE型に改良されたタイミングで、軽自動車としては異例とも言えるハイオク専用エンジンとなり、カタログ上の最高出力は変わらないものの、最大トルクが向上されていた。
そのエンジンに組み合わせるトランスミッションは5速MTのみの硬派なもので、駆動方式は前輪駆動のほか、四輪駆動も用意されている。
エクステリアは同時期の「インプレッサWRX」を思わせる大型フォグランプがビルトインされたスポーティなフロントバンパーをはじめとしたラリーをイメージさせるデザインで統一されていた。
このラリーイメージはただのイメージにとどまらず、実際に1993年のサファリラリーにヴィヴィオRX-Rの4WDモデルで参戦し、見事クラス優勝を果たしている点もヴィヴィオの基本性能の高さを裏付けるエピソードとなっている。
なお、現在までにサファリラリーでクラス優勝を果たした軽自動車はヴィヴィオのみとなっており、この記録は今後もそう簡単に破られることはないだろう。
このようにスバルのラリーイメージを凝縮したようなヴィヴィオRX-Rは、スバルが軽自動車の開発・生産から撤退してしまった今では後継車種が登場することも望めないため、今後もその価値は高まり続けていくことだろう。