2台分のタイヤ&ホイールを積める実用性の高さも自慢
それと走りもよかった。エンジンは当時すでに「まだ使っていたのか」と思わせられた古式ゆかしい1293ccの4気筒OHVで、スペックは60ps/10.5kgm。決して回すことに意味をもつ風ではなかったが、5速MTでカバーすれば快活に走ることができた。
いつだったか、某所であろうことかルーフに携帯電話(SONYのPreminiの黒いほうだった)を置いたまま走り出してしまい、途中でそのことに気づき、慌てて、一般公道ながらそれなりのペースで走らせて携帯電話を探しに引き返したことがあったが、コンパクトで軽量なうえ、荷重移動が手に取るようにわかるクルマだったから、想像以上に自然体でハンドリングが楽しめることも実感した(Preminiは小さすぎで発見することはできなかったが……)。
また実用性の高さも理解できた。年に1度、冬タイヤと夏タイヤを付け替える時期がくるが、ある時、試しにKa自身のタイヤ&ホイール(標準は13インチだったが冬タイヤは14インチを見つけてそれを使っていた)1セットと、もう1台のセダンの16インチタイヤ&ホイール(こちらは標準は17インチで冬タイヤは16インチにしていた)の、計2セット/2台分のタイヤ&ホイールが、なんと1度にKAの室内に難なく積み込めたのだった(1名乗車で助手席スペースも使用)。さすがにこの時はタイヤ交換を依頼していたショップのご主人と「Kaって凄いねえ」と驚いたのだった。
5速MTだけのラインアップが販売ではネックとなったか
後年のチンク(フィアット「500」)が、出来は100点満点といえないまでも2ペダルを標準とし、あれだけ成功を収めた例を見る限り、KaにもAT(発売前にはCVTを開発中といった話もあった)があったら、もっと評判になったかもしれないとは思う。発売当時の「乗れたら、エライ」のキャッチコピーどおり、やはり5速MTだけという点が販売上のネックになったところは否めなかった。それと「色バリ」も、日本仕様は赤、青、緑、黒など選択肢が少なかった。
ちなみに今回写真でご紹介しているカタログは1997年、1998年のUKおよび欧州仕様のものだが、こちらを見ると、パープル、ブラウンなど、ちょっと人とは違った色の用意もあり、Kaほどのせっかくのデザインのクルマなら色でも楽しみたかった……そんな思いもあった。