JMSの三菱ブースに「NERV」の車両が展示される!
2023年10月25日から開幕したジャパンモビリティショー。話題の「トライトン」を始め、三菱ブースには高い四輪駆動性能をイメージさせるモデルが多く展示されていた。現行のプラグインハイブリッドモデル、「アウトランダーPHEV」もそんな1台。展示されていたアウトランダーPHEVのうち1台は特務機関NERV災害対策車両であったが、果たしてどんな役割と目的を持つ車両なのだろうか? ゲヒルン株式会社代表取締役の石森大貴氏にお話を伺った。
特務機関NERVそして災害対策車両とは?
特務機関NERVの存在はX(旧Twitter)で知っている人もいることだろう。現在の彼らはXで災害情報を発信するだけではなく、一般向けにリリースされている自社開発の防災アプリの運用や法人企業向けの災害情報の二次配信など、防災、災害に関する情報発信を幅広く行っている。
そのスタートは一個人のアカウントであったが、現在では気象庁指定の報道機関として認められていたり、政府の災害対策委員会などにも参入していたりする。彼らが災害時に必要なライフラインであることは、一般人はもちろん行政も認めているところなのだ。
そして、この災害対策車両は災害時の長期停電や通信網断絶に備えて「防災情報配信サービスの継続」と「近隣自治体への支援」を目的とした車両となる。特務機関NERVは東京に本拠地を置くが、関東大震災のような大きな災害が東京で起きた場合でも、安全な場所に移動して情報発信という彼らの社会的ライフラインの任務に務め続ける。そのためにはこの動く災害情報発信局とも言える災害対策車両が必要というわけである。
災害対策車両に適した三菱のプラグインハイブリッド
プラグインハイブリッドというと、災害時にガソリンをエネルギー源として電源を確保できることが利点として挙げられるが、特務機関NERVはその利点に目を付けてアウトランダーPHEVを災害対策車両として導入したという。
元々は本拠地での災害発生時にも安定して情報発信をし続けるための対策として、防災対策を施した建物への移転などを考えていたそうだが、それではコスト的にハードルが高くなる。そこで、安全な場所に移動する機動力と長期停電でも電源が確保できること、この2つを満たす手段を考え、高い悪路走破性を誇るSUVプラグインハイブリッドである三菱アウトランダーPHEVという答えにたどり着いたとのこと。
アウトランダーPHEVのバッテリーは総電力20kW。この電力ならばガソリン満タンで一般家庭の最大約10日分の電力の供給が可能だ。さらに高い悪路走破性が備わっている。
もしも、大きな災害によって彼らの本拠地が崩壊してしまっても、安全な場所に移動しながら人々が必要とする情報を車両の中から発信することができる。これこそが特務機関NERVの災害対策車両の最大の役割なのだ。
東京で大きな災害があっても、この災害対策車両という動く災害情報発信局から、彼らはその役割を果たすことが可能になるのである。
災害対策車両の装備とは?
災害対策車両という考えが導入されたのは2019年のことであった。特務機関NERVは先代アウトランダーPHEVを災害対策車両の初号機、弐号機として導入。現在は車両が入れ替えられており参号機の「エクリプスクロスPHEV」と四号機の現行アウトランダーPHEVという2台体制になっている。
ジャパンモビリティショーには四号機となるアウトランダーPHEVを展示。参号機のエクリプスクロスPHEVは展示されていないが、これは会期中のもしもの災害に備えるため。大幅な改造は施されていないが、ラゲッジスペースを見てみると、電源と通信が断絶しても情報発信業務に務めることが出来るような装備が搭載されている。
内閣府準天頂衛星システム戦略室から貸与された衛星安否確認サービス「Q-ANPI」は、日本上空に静止軌道している人工衛星「みちびき」を介して、避難所の位置や開設情報、孤立した状況の把握など救難活動に必要な情報の伝達や検索ができる。
また、インターネット環境を確保するためにスターリンク衛星を利用したインターネットシステムも搭載されている。地上で携帯電話基地局などの電源が失われても、衛星を介して情報の入手と発信を行うことができるのだ。
さらに情報発信業務を行う職員たちの食料なども忘れてはいけない。ちなみに、インタビューに答えてくれた代表の石森氏のお気に入りは、非常食でもゴロゴロとしたお肉が美味しいビーフシチューとのこと。こういった非常食はアウトドアとも親和性が高そうだ。
災害対策車両を参考にする団体も
自然災害は年々脅威となりつつあるが、実際に自治体での防災訓練などにもこの災害対策車両は参加しているということもあり、この車両を参考にして、災害時にライフラインや機動力を確保する車両を導入しようという考え方が、道路公団や各地方自治体で広まりつつあるという。
車両価格が約600万円というアウトランダーPHEVは、決して安くはないクルマだが、「特務機関NERVが導入しているならアウトランダーPHEVという選択は予算の無駄遣いではない」という意見が市民や組織内で上がっていて、理解が得やすいという背景もあるそうだ。これは特務機関NERVが世間的に認められていることが分かるエピソードと言っていいだろう。
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アウトランダーPHEVは高い悪路走破性、ライフラインが断絶しても長期間電源を確保できるプラグインハイブリッドシステムを持つ、災害に備える上で、これ以上に最適なクルマはないと言える。万が一の災害に備えて、この災害対策車両を参考にするのは今後の防災のトレンドになるかもしれない。