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N1仕様「R32 GT-R」が「名車再生クラブ」で蘇った! FSWを225キロで全開走行「当時よりエンジンは全然調子いい」

走り

ストレートで255km/hと当時と遜色のない性能を披露した

実験部隊を鍛えたN1マシンの記憶

「日産自動車」の貴重な名車を動態保存するための活動を行う「名車再生クラブ」。2006年に「日産テクニカルセンター」内の開発部門従業員を中心に発足したクラブで、休日などの勤務時間外を利用しながら、座間記念庫などに保存されているヘリテージカーを年に1台のペースでレストアしている。

(初出:GT-R Magazine168号)

車両実験の一環として参戦! 後の開発にも役立った1台

16台目の再生車両として選ばれたのが、1990〜1992年までの3シーズンにわたり、同社の車両実験部チームでN1耐久レースに参戦したR32「スカイラインGT‒R」。当時、R32の実験主担を務めていた渡邉衡三氏が企画したプロジェクトで、ドライバーは加藤博義氏、松本孝夫氏、神山幸雄氏など、栃木の車両実験部トップガンを招聘。メカニックやチーム運営などすべてを実験部の社員でまかなった手弁当のチームだった。

現在のスーパー耐久はスーパーGT GT300クラスにも参戦するFIA GT3仕様のR35 GT‒Rがエントリーしているが、前身のN1耐久は改造可能な範囲が狭く、ほぼ量産車に近い仕様で戦うカテゴリーだった。

「実戦の場で実験部のドライバーやメカニックたちに経験を積んでもらうのが主たる目的でした」と、2021年12月に開かれたキックオフ式で当時チーム代表を務めた渡邉衡三氏は語っていた。

2022年11月9日、快晴の富士スピードウェイに持ち込まれた実験部チームの46号車は、まるで新車のような輝きを放っていた。

「なんだか当時よりもキレイじゃないですか!」と加藤博義氏。

まずは神山幸雄氏が車両チェックを兼ねてアウト/イン走行。各部チェックを終えた後、5ラップ連続周回を行った。久々にドライブしたR32の印象を聞くと、

「当時のフィーリングにかなり近いです。ちょっとフロントのグリップが弱いですけど、7〜8割のペースで走るには十分。ボディもしっかりしていますし、今乗っても速くて本当に楽しめるクルマだと感じました」

とその仕上がりに太鼓判を押す。その後、神山氏と交代してステアリングを握った加藤氏は、

「直線で225km/h出ましたよ! 当時はたしか230km/hくらいだったと思いますけど、われわれがやってたころよりもエンジンは全然調子良い(笑)。あのころは自分や松本孝夫がクルマを作っていましたから」

とうれしそうに語ってくれた。

今も現役のふたりが口を揃えるのは、N1に参戦したことで得た経験がその後の車両開発やドライビングに大きな影響を与えたということ。テスト走行とは異なる環境での貴重な体験は、後のGT‒Rの開発に大いに生かされたという。このN1仕様のR32は、第2世代GT‒Rの実験車両としても重要な意味を持つ1台だったということだ。

先達思想ぐためにも価値のある活動

今回のR32レストアを手がけた「名車再生クラブ」は、コアメンバー12名が中心となって運営されており、クラブのメンバーは毎年社内で募集をかけているという。毎回80名ほど集まるというが、今回は「R32スカイラインGT‒R」のレストアということで、100名以上が名乗りを上げたとのこと。中には現役R32オーナーも複数名いたそうだ。

普段はNTCで新型車の開発に携わっている面々だが、日産の過去の名車を自分たちの手で甦生させることで、当時の技術や車体の構造などを肌で感じることができる。日産の技術的なDNAを継承する意味でも大事な取り組みだと言えるだろう。

「予定よりも5カ月ほど時間がかかってしまいましたが、無事におふたりに乗っていただくことができてホッとしています。現在のクルマに比べてアテーサE-TSやパワステなどを油圧で制御している箇所が多いため、少し苦労しました。ボディは完全にドンガラにして鈑金と塗装を施したうえで、当時のロゴなどをすべて手作業で切り出して貼っています。昔の塗料よりも発色がいいせいか、『こんなにキレイじゃなかった』と言われてしまいましたが(笑)」

とコメントするのはクラブの代表を務める木賀新一氏。氏は現行型「エクストレイル」に搭載された世界初の量産可変圧縮エンジン「VCターボ」の開発者である。

「かつて世に送り出した名車を、今の日産の社員たちが知ることはとても重要だと考えます。技術的なことはもちろん、当時の開発者の思想を垣間見ることもできますし。R32はバブル期に開発されたクルマでもあるので、あのころはいっぱい開発費をかけていたんだなぁ、ということもよくわかりました(笑)。R32 GT‒Rはある意味、贅沢な作りのクルマです。間違いなく当時の最先端を行っていたと思います」

と語る。同クラブのポリシーとして見た目だけをキレイに復元するのではなく、当時の性能をしっかりと発揮できるが否かが重要で、レーシングカーの場合は「当時のスピードで走れる」ことを目指しているという。

ドライバーを務めた加藤氏のコメントにもあった通り、「当時よりも速い!」という最大の賛辞は、同クラブのスタッフにとって最も心に染みる労いの言葉になったであろう。

(この記事は2022年12月1日発売のGT-R Magazine 168号に掲載した記事を元に再編集しています)

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