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バブル期のホンダ「NSX」やマツダ「AZ-1」が世界を牽引! 量産車世界初のボディを生み出したメイドインジャパンはすごかった

カーボディ素材はスチール以外にもあった

クルマのボディや骨格は、耐候性や修復のしやすさからスチール素材が採用されていることが多い。しかし中には、こんなもの使っているのか、というクルマもある。今回はそんな素材に注目してみたい。

カーボンはボディ素材として最強

まず挙げたいのは、カーボン繊維を利用したものだ。カーボン繊維を樹脂で固めたCFRP(カーボン・ファイバー・リーンホースド・プラスチック)は、軽くて強度が高いという特長がある。さらにいうと疲労強度に強く、通常の熱環境での安定度も高い。そのためレーシングカーや航空宇宙産業などではあたり前に使われている。

このCFRPはもともと、釣り竿やゴルフクラブのシャフト、テニスやバドミントンのラケットなどに、50年ほど前から使われていた。カーボン繊維を編んでつくったシートを、熱硬化性樹脂に浸して重ね、熱を加えながら圧縮することで成型する、というのが基本的な製品のつくりかたとなっている。このシートを重ねて、というところが重要なポイント。繊維の方向をコントロールすることで、一方向の強さを増すなどといったこともできるため、金属素材ではつくるのが難しい形状の部品を製作したり、分割ではない一体成型が可能となったりする。

そこでレーシングカーでは、モノコックをカーボンで製作する、ということが一般的におこなわれている。市販車でも「マクラーレンF1」やKTMの「クロスボウ」などは、カーボンモノコックだ。もうちょっと一般的なクルマでいうと、アルファ ロメオ「4C」もカーボンモノコック採用車。外板でいえば、マクラーレンF1がそうだし、シボレーの「コルベット」にもカーボンボディを採用した限定モデルがあった。

さらに最近では、単純な形状、たとえばクルマのルーフやハッチゲートといったパーツ製作では、カーボン繊維を編み込まず、樹脂内に混合した状態でプレス成型する、シートモールディング工法が実用化され、「GRヤリス」のルーフにも採用されている。

カーボンにも弱点はある

ただこのカーボン素材には、問題点もある。それは修復の難しさとリサイクルという部分だ。カーボン製パーツの修復は、基本的には交換ということになるので、修理費用が高額となる。そのため高額なスペシャルモデルならともかく、市販車には採用しにくい。またリサイクルという面でも難があるため、販売台数が多いクルマには一部ならともかく、全面カーボンというのは採用しにくい。とはいえ今後、製造コストの面で有利なシートモールディング工法が進化しリサイクル性が確立されたら、軽さと強さを持つカーボン素材は、もっと一般化する可能性を秘めている。

オールアルミボディはホンダのNSXが実現

次にアルミ素材。よく知られているのはモノコックから外板まで、すべてアルミを採用した初代「NSX」だ。アルミはスチールよりも比重が低いため、軽いというのが大きなメリットなのだが、修復の難しさから採用するクルマは少なかった。

しかし現在では、アルミをはじめとするさまざまな素材を適材適所で採用することで、トータルでの重量軽減を狙ったクルマも登場している。たとえばアウディ「A8」は、アルミ合金とスチール鋼板、マグネシウム、CFRPをつかってモノコックを構成している。テスラはアルミを素材に、プレスではなくモノコックそのものを鋳造して製作。ただこれは、テスラ独自のものではなく、たとえばBMWは前後のストラットタワー部をアルミ鋳物とし、その間を鋼板でつなぐ、というつくりかたをしているのだが、これは一体型の鋳物では剛性が高すぎでハンドリングに影響が出る、ということから採用されたもの。自動車メーカーはそれぞれに、コンセプトに基づいて最適な素材を最適な形状で使う、ということを考えているのだ。

樹脂素材はマツダのAZ-1に採用

軽さという部分からいえば、樹脂素材もクルマには採用されている。GFRP(グラス・ファイバー・リーンフォースド・プラスチック)といわれるのがそれで、ガラス繊維を樹脂で固めて成型するもの。マツダ オートザム「AZ-1」の外板はこのGFRP製であり、アフターパーツメーカーのエアロパーツの多くもGFRPで成型されている。このGFRPは型に貼りつけて硬化させることで成型するためにデザイン再現性が高く、錆びないというメリットもある。金属と比べると軽いというのも大きなポイントだ。

ただ、耐候性が金属よりも低く経年劣化がおきやすく、耐衝撃性という部分でも劣るために、全面に採用するというのは難しいところがある。AZ-1の場合はもともとメーカーが少量生産車として計画していたことから全面樹脂製ボディが採用されたが、現在はフェンダーなど一部に樹脂製パーツを採用することで軽量化をすすめる、というクルマが一般的となっている。

あのデロリアンはステンレスボディだった

耐候性という点では、ステンレススチールが優れている。そのことからステンレスをボディ外板に採用し、無塗装で販売されたのが、BTTFでお馴染みのデロリアン「DMC-12」だった。当初はバックボーンフレームにGFRP製ボディを架装する、という予定だったこのモデルは、ステンレスの耐候性の高さによるメンテナンス性の向上を狙って、ボディをステンレス製とした。

ボディのへアラインは、仕上げのためにサンドペーパーで磨いた傷そのもので、これがいい味を出しているのだが、しかしステンレスボディはスチールボディよりも若干重く、当初計画されていた樹脂ボディよりもはるかに重いため、それが動力性能低下の原因のひとつとなっている。現代では高張力鋼板など、スチールでも軽くて強度のあるものが一般化されているので、あえてステンレスを選ぶ理由がなくなってしまっている。

現代でも木製のクルマは存在する!?

昔の馬車というのは、木製フレームの上に木製ボディを載せてつくられているのだが、その工法を現代もそのままに活かしているのがモーガンだ。いまもすべて手作りで、発注してから納車まで非常に時間が掛かることでも知られているが、それはクラフトマンシップのあらわれ。このモーガンの一部のモデルは、いまでも主要構造材に木材を採用している。加工しやすく軽くて丈夫、さらにはクラッシュにも強い、というのが採用を続けている理由だが、これにはイギリス国内における少量生産メーカーに対する優遇措置があるからできること。逆にいえばグローバルメーカーでは安全面から木材を構造に使用することは、技術的に難しいといわざるを得ない。

環境負荷の低減や安全性から、いまでも自動車メーカーはさまざまな素材をテストし続けている。この先どんな素材があらわれるのかはわからないが、航空宇宙技術を見ていると、おそらくCFRPを含む樹脂素材はもっと一般化してくるのではないだろうか。さらにいえば、3Dプリンターも含む工法の進化も著しい。そういう観点から自動車を見ていくというのも結構面白いので、2023年10月28日から東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショーのコンセプトカーだけではなく、いろいろな企業が出展したブースで紹介された素材や工法のアピールにも注目してみてほしい。

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