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1963台限定、4000万円オーバーのポルシェ新型「911S/T」はMTのみ! 峠から普段遣いまでオールマイティでした

1963台限定、4000万円オーバーのポルシェ新型「911S/T」はMTのみ! 峠から普段遣いまでオールマイティでした

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TEXT: 西川 淳(NISHIKAWA Jun)  PHOTO: ポルシェ・ジャパン

ギアチェンジがとてつもなく楽しい!

国際試乗会はイタリアのつま先、カラブリアで開催された。試乗会の場所としてはとても珍しく、業界に30年以上身を置く筆者も初めての場所。けれども近くにはポルシェが所有する有名なナルドサーキットがあり、さらにドイツ周辺で満足なテストのできない冬場などにテストクルーは好んでこの辺りを走っているらしい。今回はS/Tが磨き込まれた場所でメディアテストを行うというわけだ。さて、その走りはいかに?

海辺のビーチハウスで濃紺のヘリテージパッケージを受け取った。ブラウンレザーとの組み合わせはまさにクラシック! スポーツモデルなのにシックというミスマッチが最高にオシャレだ。

エンジンを掛け、野太い唸りに誘われてついブリッピング。シャーン、シャーンと明らかに軽い回り方をする。最新モデルにしては重めのクラッチを踏み込んだ。アイドリングでミートさせてスタート、と思ったらいきなりエンスト。軽いフライホイールのためエンジンが切れ味鋭く回るから、ナローを思い出して軽く煽って繋いだ方が良さそうだ。

海岸線から小さな街をぬけ、山道へと入っていく。低中速域における一般道の乗り心地は想像以上に良かった。助手席も含め、硬くて嫌になるということがない。車体とつねに一体となって動くのだけれども、不思議と不快なショックだけは身体に伝わってこないのだ。

林道のようなワインディングに入った。サスペンションをスポーツにセット。今度こそGT3のようなフラット&ハード感を予想したのに、ほとんど変わらない。ちょっとハードになっただけで、GT3のように硬い板に乗せられたようなフラット感はない。足のよく動く感じがドライバーに素直に伝わってくる。

ワインディングの楽しさは極上

走り出してしまえば、重いペダルも軽いフライホイールもシフト操作を楽しませる要素でしかなくなった。シフトストロークが短くなって、自動ブリッピングも上手だから、マニュアル変速がとてつもなく楽しい!

とはいうものの狭い峠道ではほとんど2速(120km/hくらいまで)固定で走ることになる。5000回転あたりから発せられるラウドだけれど決して野卑ではないサウンドに心が昂る。クルマ運転好きの心に響くメカニカルなノイズにコクピットが包まれる。6~7000回転あたりをキープしながら走っていても苦しくない。なんなら8000回転まで回しても気にならない。それでいて1000回転ちょいでもエンジンは機嫌よく働く。素晴らしく柔軟なエンジンだ。

最も楽しかったのはヘアピンのようなタイトベントをクリアする感覚だった。リアステアシステムを外し忘れた? と思うほど面白いようにノーズが内を向く。出口が見えた刹那、右足を踏み込めば力強く後輪が路面を蹴り出す。前輪も後輪も自分の思いのままに動いている。そんな911が楽しくないわけがない。

ワインディングロードの楽しさにおいて、近年稀に見るハイパワーモデル。それでいて街中ではけっこう快適で、高速道路では申し分のないツアラーだったから、突出したオールマイティさを誇る911の中でもさらに極上の“全方位マシン”であったといっていい。

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