このクルマが原点
そして、なぜか納車時からトランク内にオマケとして収められていた、東京・高島平のフィアット&アバルト・スペシャリスト「QUICK」社製の4本出しマフラーを、同社に持ち込みで装着してもらえば、少なくともカッコとサウンドだけは小さなイタリアンスーパーカー。デタッチャプル式のハードトップを外して走る爽快感は、ほかのクルマも知らないクセして「最高!」と思わせてくれた。
でも今になって振り返れば、その時の思いこみはあながち問違ってはいなかったのではないかとも実感している。卒業後、かつてのフェラーリ日本総代狸店「コーンズ&カンパニー・リミテッド」に就職し、初めてフェラーリのステアリングを握る機会を与えられたときにも、X1/9での経験があったから、特に戸惑うことなく運転することができた。
アバルトなどイタリア車ばかりを乗り継いだのも、このX1/9の苦く甘い記憶があってのこと。そして35年後となった現在でも、生産国やカテゴリーを問わず、あらゆる種類のクラシックカーを操縦するためのスキルを得ることができた原点は、このクルマにあったとも言えるだろう。
人生初の愛車であるフィアットX1/9で得られた感覚は、これからも生涯にわたって箪者の中に残り続けるに違いない。そう碓信しているのである。