ニューメキシコ州トゥクムカリの名物ブルースワロー・モーテル
広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。シカゴを出発して西に向かい、イリノイ州からミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州を経て、ニューメキシコ州へ入りました。今回は、ルート66でも有数の観光名所となっている老舗モーテルを紹介します。
かつて「2000の部屋がある」をうたった古い宿場町
アメリカのドライブ旅行に欠かせないモーテル。基本的に予約がいらずホテルに比べリーズナブルで、全米チェーンから個人経営までスタイルはさまざまだ。ルート66ではモーテル自体が観光名所になっているケースもあり、その代表がブルースワロー・モーテルと言っていいだろう。
テキサス州からニューメキシコ州に入り1時間ほど走ると、トゥクムカリというなんとも難しい発音の街に到着する。ここは「2000の部屋がある」をうたう宿場町で、中心部を貫くルート66沿線に無数の宿が立ち並ぶ。多くは1930~1950年代から続く歴史の長いモーテルで、日が暮れてからのネオンサインが煌々と輝く光景は、リトル・ラスベガスと表現されることがあるほどだ。競争が激しいゆえに清潔かつ接客のクオリティも素晴らしく、事前の下調べなしに飛び込んでも失敗する可能性は少ないだろう。
1941年創業のブルースワロー・モーテルはいまも大人気営業中
そんなトゥクムカリでもっとも有名な宿といえば、1941年に創業したブルースワロー・モーテルだ。聞くところによれば当初から何度か経営者は変わっていたようだが、1958年にフロイド・レドマンが妻リリアンへの婚約プレゼントとして購入。当時としては珍しい全室にテレビとエアコンを完備する宿は、オーナー夫妻の人柄もあってルート66廃線後も人気が衰えず、閉業してしまう宿も多いなか旅人のオアシスであり続ける。
88歳となったリリアンは1998年にモーテルを売却するが、跡を継いだオーナーたちはネオンサインなどを修復しつつ、現在もトゥクムカリきっての人気モーテルとして営業中だ。
客室数が14と決して多くないこともあり、私がここに宿泊できたのはたった2回だけ。夜どころか夕方に到着しても間違いなく満室なので、確実に泊まりたいなら予約がベストだろう。建物は当時のままで決して広くはないし、歩けば床がきしみ音を立てることだってある。ただし清掃は一流のホテルにも負けないほど行き届いており、空調もテレビもWi-Fiもパーフェクトで不便さは皆無といっていい。
部屋の窓越しに煌びやかなネオンサインを眺めながら、ルート66を行き交うクルマの音に耳を傾けていると、廃線前の時代にタイムスリップした錯覚に陥ってしまう。